今回は、営業活動へのTOC適用について書いてみます。

従来、営業部門での改善活動と言えば、セールス担当者のメンタル面を強化する「根性教育」や、販売製品の良さを顧客にもっと知ってもらうための「商品教育」など、営業マンとしてのスキルアップを中心としたものが多いかったようです。

今回紹介するのは、営業マンのスキルアップではなく受注活動の流れに着目し、TOCの基本である「制約条件」にフォーカスすることで、営業プロセスの強化を図るものです。

営業活動へのTOC適用

まず今回の改善目的を、「受注量(受注金額)を増やす」と位置づけ、TOC適用を図ることにします。

次に、営業プロセスを強化するためには、現在の営業プロセスを明確にする必要があります。

そして営業プロセスを明確にする方法としては、関係者が集まり現在の作業をフローチャートに書き出す方法(情報工程分析)もありますが、業務の開始から終了に向けて書き出す方法では、手順に抜けが発生したり、余分な(不要な)手順が加わってしまったりしてしまいます。

そのため今回お勧めするのは、CCPMのプロジェクト・ネットワークを作成する手順【CCPM(2)CCPMのスケジューリング方法】です。

CCPMのプロジェクト・ネットワークを作成する手順では、完成(受注の獲得)時点から現在に向けて全ての手順を洗い出すため、目的を達成するための必要最小限の業務だけが引出されます。

今回は、基本的な営業プロセスを使い手順を解説します。

<基本的な営業プロセス>

そして、この基本的な営業プロセスの中で、それぞれ求められることは下記のような内容となります。

<各営業プロセスで求められる内容>

ターゲット先の選定      : 何社を対称にすればよいのか?

キーパーソンとの関係構築 : ターゲット先のうち、何社関係を構築しておけばよいのか?

案件ニーズ抽出        : 何件案件ニーズを持っておけばよいのか?

提案書の提出         : 何件提案書を出せばよいのか?

クロージング          : 何件受注すればよいのか?(商品別は?平均受注額は?)

この各営業プロセスにおいて、どのプロセスが弱いのか?(ボトルネックはどこか?)を知ることで、受注件数を増やすためのポイントを見つけることが出来ます。

では、各プロセスにて求められることがどんな状態なのか?(良いのか?悪いのか?)について、何を基準に(評価指標として)弱い・強いを判断すればよいのでしょうか?

一つの答えとして、営業効率と呼ばれるものがあります。この営業効率は、受注金額を販売先となるターゲットの件数で割ったもので表わされます。

営業効率 = 受注金額 ÷ ターゲット件数

そしてこの営業効率を上げるには、できる限り少ない「ターゲット件数」で、より多くの「受注金額」を上げることが求めれれていることが解かります。

また、営業効率は下記に示す5つのモニタリング指標(関係構築力・案件ニーズ把握率・提案率・受注数・平均受注金額)により算出されます。

<モニタリング指標>
営業効率 = 関係構築力 × 案件ニーズ把握率 × 提案率 × 受注率 × 平均受注金額
  • 関係構築力 = 関係構築件数 ÷ ターゲット件数
  • 案件ニーズ把握率 = 案件ニーズ抽出数 ÷ 関係構築数
  • 提案率 = 提案件数 ÷ 案件ニーズ抽出数
  • 受注数 = 受注数 ÷ 提案件数
  • 平均受注金額 = 受注金額 ÷ 受注数

そしてこのモニタリング指標に合わせ、現在の実績値を入れ、プロセス順に上から下に漏斗のような形にグラフ化することにより、受注量(受注金額)を増やすための制約条件(ネック工程)となるプロセスを、一目で見つけることが出来ます。

この漏斗の形で極端に狭くなっているプロセスが、現在のプロセスで一番弱い部分となります。よって、まずはこのプロセス(一番弱いプロセス)の能力を上げる必要があります。

では、どのような方法で能力を上げればよいか?ということですが、それは制約となったプロセスにより変わってきます。

そのため、まずはリソース(人員や設備・道具など)を増強する前に、どのような方法でその業務をこなしているのかを調査し、その方法で良いのか?最適なのか?などを検討してから、改善余地があれば改善・変更することで、ムダの無い業務形態を決めた上で、必要なリソースを算出することをお勧めします。

なお、現有業務の見直しについては「思考プロセス」を使うと、的確なアプローチを行うことができると思います。

まとめ

営業部門へのTOC適用では、制約を見つけるために、なかなか目では見えない情報をどのように「見える化」が、改善のポイントとなります。

ただし、出てきた数字をただ漠然と評価するのではなく、各業務の進め方については常に改善の余地が無いか?について、意識することが大切です。