前回、前々回と、不良率改善・稼働率改善の効果について書いてきました。
今回は、段取り改善の効果について書きます。
段取り改善の効果問題
3.段取り改善の問題
製品Aの制約工程における段取り改善の効果を求めなさい。
条件
- 製品Aの需要はいくらでもあるものとする。
- 制約工程は、製品Aのために10時間/週しか使うことができない。
- 製品Aのスループットは、1,000円/個とする。
- 製品Aの制約工程での加工時間は2分/個である。
- 加工ロットの大きさは、100個である。
- 加工ロット変更のためには、20分/回の段取り時間がかかります。
問1.制約工程の時間(分)当たりのスループットはいくらか。
問2.段取り時間を20分/回から5分/回に改善したときの、制約工程での時間(分)当たりスループットはいくらか。
問3.週に利益はいくら増加するか。
稼働率改善問題の解答
問1.制約工程の時間(分)当たりのスループットはいくらか。
制約工程で100個生産するのに必要な時間は、加工時間+段取り時間で220分となり、100個分のスループットは100,000円となりますから、時間(分)当たりスループットは、455円となります。
100個生産に必要な時間 : 220分=100個×2分+20分
100個分のスループット : 100,000円=100個×1,000円
時間当たりスループット : 455円/分=100,000円÷220分
問2.段取り時間を20分/回から5分/回に改善したときの、制約工程での時間(分)当たりスループットはいくらか。
制約工程で100個生産するのに必要な時間は、加工時間+段取り時間で205分となり、100個分のスループットは100,000円となりますから、時間(分)当たりスループットは、488円となります。
100個生産に必要な時間 : 205分=100個×2分+5分
100個分のスループット : 100,000円=100個×1,000円
時間当たりスループット : 488円/分=100,000円÷205分
問3.問2の改善を実施したとき、週に利益はいくら増加するか。
制約工程における製品Aに与えられている時間は10時間/週なので、段取り時間が20分/回の場合に、10時間で生産できる量は237個となります。
また、段取り時間が5分/回の場合に、10時間で生産できる量は293個となります。
よって、スループットの増加額(利益の増加額)は、20,000円となります。
20分/回での週の生産量 : 237個=(10時間×60分÷220分)×100個
5分/回での週の生産量 : 293個=(10時間×60分÷205分)×100個
スループットの増加額 : 20,000円=(293個-237個)×1,000円
※ 制約工程での段取り改善効果としては、スループットの増加が全て利益となります。
まとめ
段取り改善の効果は、制約工程ではスループット(利益)の増大をもたらします。
しかし、制約工程以外での段取り改善は意味が無いというわけではなく、非制約工程での段取り改善は、生産リードタイムの短縮・生産ロットの最小化などにより、顧客要求への対応力を強化しします。
三回に分けて不良率改善・稼働率改善・段取り改善と、製造部門では代表的な改善の効果について書いてきました。
高度成長期は、これらの改善をどの工程で実施しても企業の利益に結びつきましたが、低成長期では、改善を行う場所(工程・設備)や改善の方向性、改善の度合いなどにより、利益を増やすどころか逆に、利益を圧迫してしまうことすらあります。
そのため低成長期での改善では、自社の利益増大を阻む制約を見付け、その制約を解消するための改善を実施することが大切です。