今回は、DBR入門編の最後として、DBRの考え方や機能をまとめます。
DBRのイメージ
《DBRの考え方》
DBRでは、計画は遅れるものと認識する。
※ ナゼ! 直列型の生産ラインでも、並列型の生産ラインでも、計画は必ず遅れるのか!
1.生産ラインにおける作業時間のバラツキを、科学的に考える。
2.生産ラインにおける「遅れの伝播」を受入れる。(計画は必ず遅れる)
直列工程の場合は、作業時間が早く終わる確率50%・遅れる確立50%であるため、次工程へ早く仕事をわたせる確率は50%となります。
しかし、早く到着した50%の内、次工程が早く着手できる確率は、更にその中の50%となり、工程3に早くものが到着する確率は、50%×50%=25%となってしまいます。
更に工程4では、25%×50%=12.5%まで下がります。逆に遅れは、どこかが遅れれば全体が遅れてしまいます。
並列工程の場合は、どこかの工程が遅れれば、その遅れが全工程に遅れを伝播します。
遅れの伝播から、生産ラインを守るもの
1.バッファ
いつ起こるか分からないが、必ず起こる生産上のアクシデント(突発故障や材切れなど)から、制約工程の能力低下を保護する。
2.保護能力
制約工程より前の工程の生産のゆらぎ(材着遅れや品質トラブルなど)から、制約工程以外が遅れを取り戻すために持つべき能力の余裕。
<注意>
バッファと保護能力の関係は、
- バッファを大きく取れば、保護能力は少なくてすみますが、リードタイムは長期化します。
- バッファを小さくすれば、保護能力を多めに取らないと、スループットが失われます。
※ TOCでは、通常良いものとされている「工程能力がバランスしたライン(バランスライン)」は、全ての工程が制約工程となりうるため、よくないとしています。
要求量をこなすために必要な能力以上の能力は、生産ラインをゆらぎから保護するために、必要な能力であるとしています。
《DBRの機能》
DBRの管理に適した生産ラインについてですが、
- 繰返し生産品(リピート品)であり、比較的生産リードタイムが短いもの。
- 量産品で、生産工程があまり変化しない(工程や設備が変わらない)もの。
です。
DBR導入手順は、「継続的改善の5ステップ」により進められます。
継続的改善の5ステップ
Step-1 : 制約条件を特定する。
Step-2 : 制約条件を徹底活用する。
Step-3 : 非制約条件を制約条件に従わせる。
Step-4 : 制約条件を強化する。
Step-5 : 惰性に注意しながら、最初から繰り返す。
手順-1:DBR導入準備
初めてDBRを導入する場合は、いきなり全体へ適用するのではなく「モデルライン」を設定することで、
確実に成功させることが重要です。(失敗は、方針制約の壁を厚くし、やりたくない言い訳のネタとなってしまいます)
【準備事項】
- DBR導入チームのメンバーを決める。
- TOCの導入研修を実施する。
- 目標値、評価基準を設定する。
- 対象製品、対象ラインを設定する。
- 適用範囲を設定する。
導入手順-2:制約条件を特定する。(継続的改善のステップ1)
正確な制約条件を特定するために、情報収集などに多くの時間が必要な場合は、正確度より開始時間の早さを優先させる。(多くの人が「この工程じゃないか?」という工程を制約としてスタートする)
1)物理的制約(需要>供給の状態)の場合
【制約工程の決め方】
- 負荷/能力分析により、一番能力の低い工程を制約工程として位置づける。
- 工程内で仕掛りが一番溜まっている工程を、制約工程として位置づける。
- ライン長や工程担当者に聞き、制約工程を設定する。
2)市場制約(需要<供給)の場合
【制約工程の決め方】
- 顧客の要求を制約として位置づける。
- サプライチェーンを広げ、制約を決める。
導入手順-3:制約条件を徹底活用する。(継続的改善のステップ2)
・現在持っているリソースを制約工程に集中させ、持ちうる最大のパフォーマンスを引出す。
制約条件工程 → 作業改善、品質改善、設備改善などを行う。
非制約条件工程 → 出来る限り早く、次工程に製品を流す。
※ 改善技法は何でもOKですが、部分最適な改善活動にならないよう注意する。
導入手順-4:非制約工程を制約工程に従わせる。(継続的改善のステップ3)
制約工程の能力を向上させるために、他の工程は何をすべきか考え行動する。
- 投入量をコントロールする。(必要以上に仕掛りが増えないようにする)
- 出来る限り前の工程で、品質改善を行う。(制約工程での負荷を減らす)
- 制約工程以外では、出来る限りロットサイズを小さくする。(リードタイムを短縮する)
- 活動を制約しているルールや決まり、方針などを減らす。(活動への制約を無くす)
- スループット向上につながる活動を一次中断する。(活動への矛盾を減らす)
DBRの入門編については、とりあえず今回で終了とします。
今後は、スループット会計・CCPM・思考プロセス・‥などを、順次掲載して行く予定です。