今回は、TOCにおける「制約」について、もう少し詳しく書いてみます。
- TOCは、企業収益の鍵を握る「制約条件」にフォーカスする事によって、最小の努力で最大の効果(利益)をあげるシステム改善手法である。
- 制約には、「物理制約,市場制約,方針制約」の3つがある。
上記の二点については、前の記事で既に触れました。
ここでは、”3つの制約”について詳しく書きます。
物理制約とは
需要に対し、設備能力や作業人員などの物理的な制約により、需要を満足させることが出来ない状態を指します。(物理制約=需要>供給の状態)
・物理制約が起きている状況では、在庫不足や欠品があちこちで発生しています。
物理制約の特徴は、
物理的で有形的なものであるため、制約として認識することが比較的容易であることです。
物理制約への主な対策
能力上の制約であれば、無駄時間の排除や段取り時間の短縮・品質改善・設備や作業員の追加などが、物理的制約に対する対処法となります。
TOCでは、継続的改善の5ステップ(次回説明)を使い、改善を物理制約の解消を図ります。
市場制約とは
物理制約とは逆で、供給能力(設備能力・作業人員など)は十分にあるが、需要が少ない(受注がない)状態を指します。(市場制約=需要<供給の状態)
市場制約が起きている状況では、赤字製品の生産中止が頻繁に発生し、売れない製品があちこちに在庫の山を作っています。
市場制約の特徴は、値下げが頻繁に行われ、効率を上げるための、まとめ生産が行われる状態になることです。
市場制約への主な対策
市場競争上の制約であれば、リードタイムの短縮・納期遵守率向上・価格政策などの企業戦略の見直しを行います。
市場の拡大が問題であれば、既存市場の増大(バイアブルビジョン・URO)や新市場の開拓(ブルーオーシャン戦略)を行いますが、TOCでは、思考プロセスを中心とした継続的改善の5ステップで進めます。
方針制約とは
方針制約は、会社のルールや決まり・習慣・評価基準など、本来「正しいもの」「守らなければならないもの」として存在します。(方針制約=正しい行動が、出来ない状態)
方針制約が起きている状況では、正しい行動が正しく評価されません。
方針制約の特徴は、環境の変化や市場動向などによって、結果が良くなったり・悪くなったりします。
また多くの場合、方針制約は、常に正しいものとして認識されているため、その存在に気づくことが少なく、一番対応が難しい制約です。
方針制約への主な対策
方針制約は、間違った方針の変更、教育によるパラダイムシフトの働きかけ、評価方法の変更などを行いますが、TOCでは、思考プロセスを中心とした対応と、スループット評価で進めます。
制約は、それぞれが単体で発生することは少なく、ほとんどの場合いくつかの制約の複合体として表れます。また方針制約は、物理制約や市場制約などを引き起こす、根本原因となっていることがほとんどのようです。
次回は、TOCにおける評価基準について書いてみます。