前回は、DBR導入前に準備しておきたいことを書きました。

今回はいよいよ、導入のステップに入ります。
DBR導入のステップは、物理的制約の解消手順として紹介しました、
「継続的改善の5ステップ」に沿って実施します。

【継続的改善の5ステップ】

物理的制約への対処法→継続的改善の5ステップ


導入手順-2 : 制約条件を特定する。

ここでは、儲け続けることを阻害している「制約条件」を見つけます。
なお、物理的制約を見つけることは比較的簡単です。

物理的制約を見つける方法を以下に紹介します。

1.生産能力が不足している : (需要<供給)の状態

(1)負荷/能力が計算できる場合

制約工程は、従来から使われている「負荷/能力分析」などにより、調べることが出来ます。

負荷/能力分析

負荷/能力計算では、

負荷(月) : 顧客が要求する製品の1ヶ月分の製品を生産するために必要な、
各工程での必要工数を産出します。(必要工数=必要量×1個当りの作業工数

能力計算(100%)では、

能力(月) : 各工程が持っている全時間(持ち工数)を産出します。
持ち工数=1日の持ち時間×月の稼働日数

能力計算(75%)では、

能力(月) : 各工程が持っている持ち工数に、稼働率(75%)を考慮して産出します。
稼働可能工数=1日の稼働可能時間×稼働率(75%)×月の稼働日数

この3つの計算値が産出できれば、制約工程は特定されます。
制約工程=必要工数>稼働可能工数 となります。

この計算では、持ち工数の産出結果は不要に思えますが、この持ち工数は、
リソース(設備や人)が「絶対量として不足しているのかどうか?」を判断するために使われます。
もちろんこの計算結果が、必要工数より少ない場合は、全てを生産することは不可能であり、
外注策や注文のキャンセルなどの対策が必要となります。

また、持ち工数>必要工数>稼働可能工数であれば、外注策やキャンセルを行わなくても、
現有リソースで対応できる可能性があるということになります。

※ ただし、必要工数>稼働可能工数の工程は、1つとは限りません。
なお、2つ以上が制約工程となった場合は、最も生産能力が低い工程を制約工程とします。
また、能力的にも変わらない場合は、初工程に近い工程を制約工程とします。

(2)負荷/能力が計算できない場合

負荷/能力が計算できない場合とは、主に以下の通りです。

・生産能力が安定しない(作業者スキルや人員、設備の不安定など)場合
・ST(スタンダードタイム)やCT(サイクルタイム)が管理されていない(調査されていない)場合
・対象製品が多く、計算するのには多くの時間(手間)がかかる場合

このような場合は、

1.仕掛りが一番多く溜まっている工程を、制約工程と位置づける。
2.生産ラインの作業者に聞き(勘、経験を活用)、制約工程を決める。

などにより、特定します。

ここでは、多くの時間を要して調査をするのではなく、
出来るだけ早く制約工程を決めて、次のステップに進むことが大切です。
(もしここで制約工程ではない工程を選んでも、ステップを進める中で明確になります)

2.生産能力はあるが、要求される製品を作りきれない :  (生産能力>需要>供給)の状態

この状態は、どのような時に起きるのでしょうか?

1.生産ラインが生産効率を上げるため、需要に合わせた生産を行わない。
2.段取り時間が長く、少量多品種に対応できない。
3.特急品が多く、生産ラインが混乱している。
4.生産ラインの評価基準が金額となっており、金額の高いものを優先して生産する。
5.輸送コストを意識しすぎて、外注先や協力工場との輸送頻度が少ない。
6.生産計画立案・生産管理が、上手く機能していない。

などです。

このような問題は、方針制約」中核問題として存在していることが多いようです。
そのため、TOC思考プロセスの現状問題構造ツリー」により、問題の構造を知ることが大切です。

現状問題構造ツリー

また、何が問題か(中核問題)は解かっていても、対処方法が解からない場合は、
TOC思考プロセスの「対立解消図」により、
間違った行動を起こさせている「間違った仮定」を見付け、対処する必要があります。

対立解消図

TOC思考プロセスについては、別途この講座で書いて行きます。

次回は、導入手順-3「制約条件を徹底活用する」です。