前回は、製品最適ミックスのケーススタディーを演習問題として出しましたが、答えは出たでしょうか?

そこで今回は、前回のケーススタディーの解答について考えて見ます。

製品最適ミックスによる演習の解答例

解答例-1

製品P、製品Qを全部生産する。

製品P 製品Q
最大販売可能数 200 170
生産予定数 200 170
販売価格 90,000 120,000
原材料費 40,000 38,000
1個当たりのスループット 50,000 82,000
スループットの合計 10,000,000 13,940,000

生産数 : 製品P=200個、製品Q=170個
利  益 : 1,394万円

<負荷/能力の確認>
工程 製品P 製品Q 使用可能な作業時間 必要な作業時間 作業時間の過不足
切削工程 15 20 9,600 6,400 3,200
孔明工程 25 25 9,600 9,250 350
研磨工程 45 0 9,600 9,000 600
溝切工程 15 55 9,600 12,350 -2,750
塗装工程 10 10 9,600 3,700 5,900
仕上工程 25 25 9,600 9,250 350
組立工程 20 5 9,600 4,850 4,750
工程全体 155 140 67,200 54,800 12,400
解答例-1の結論

製品P:200個、製品Q:170個を、全て生産することは出来ない

・溝切工程の使用可能時間の不足により、全て生産することは「実行不可能」である。

解答例-2

1個当たりのスループットが大きい方(製品Q)を、優先して生産する。

まず、製品Qを全て生産し、残った時間で作れるだけ製品Pを生産する。

製品P 製品Q
最大販売可能数 200 170
生産予定数 16 170
販売価格 90,000 120,000
原材料費 40,000 38,000
1個当たりのスループット 50,000 82,000
スループットの合計 833,300 13,940,000

生産数 : 製品P=16個、製品Q=170個
利  益 : 477.3万円

<負荷/能力の確認>
製品P 製品Q 使用可能な作業時間 必要な作業時間 作業時間の過不足
切削工程 15 20 9,600 3,650 5,950
孔明工程 25 25 9,600 4,667 4,933
研磨工程 45 0 9,600 750 8,850
溝切工程 15 55 9,600 9,600 0
塗装工程 10 10 9,600 1,867 7,733
溝切工程 25 25 9,600 4,667 4,933
組立工程 20 5 9,600 1,183 8,417
工程全体 155 140 67,200 26,384 40,816
解答例-2の結論

製品P:16個、製品Q:170個を生産することが、利益最大となる組合せである。

よって、最大の利益は477万円である。

製品Pは製品Qに対し、販売価格が高く、原材料費が安いため、1個当たりのスループット82,000円と大きい(製品Qは製品Pの1.5倍)、製品Qを優先して作ったほうが得である。

※ しかし、本当に販売価格から原材料費を引いた差額が、大きい方を優先して作ると「利益最大」となるのでしょうか?

解答例-3

制約工程の時間当たりスループットが、大きい方(製品P)を優先して生産する。

まず、製品Pを優先して生産し、残った時間で製品Qを生産する。

製品P 製品Q
最大販売可能数 200 170
生産予定数 200 120
販売価格 90,000 120,000
原材料費 40,000 38,000
1個当たりスループット 50,000 82,000
スループット合計 10,000,000 9,840,000

生産数 : 製品P=200個、製品Q=120個
利  益 : 984万円

<負荷/能力の確認>
製品P 製品Q 使用可能な作業時間 必要な作業時間 作業時間の過不足
切削工程 15 20 9,600 5,400 4,200
孔明工程 25 25 9,600 8,000 1,600
研磨工程 45 0 9,600 9,000

600

溝切工程 15 55 9,600 9,600 0
塗装工程 10 10 9,600 3,200 6,400
仕上工程 25 25 9,600 8,000 1,600
組立工程 20 5 9,600 4,600 5,000
工程合計 155 140 67,200 47,800 19,400
解答例-3の結論

製品P:200個、製品Q:120個を生産することが、利益最大となる組合せである。

よって、最大の利益は984万円である。

・制約工程である「溝切工程」の1分当たりのスループットは、

製品Pが50,000円/15分(1分当たり3,333円)
製品Qが82,000円/55分(1分当たり1,491円)

となり、時間当たりのスループットが大きい製品Pを、優先して作ったほうが得である。

<ケーススタディー2のまとめ>

解答例-1 利益1,394万円 (一番多い回答ですが、実行不可能である)
解答例-2 利益  477万円 (従来からの考え方ですが、利益最大ではない)
解答例-3 利益  984万円 (スループット計算での考え方で、利益が最大となる)

このケーススタディーでは、1ヶ月に9,600分と限られた制約工程(溝切工程)の能力を、製品Pの生産に使えば、1分当たり3,333円のスループットを生み出すのに対して、製品Qは1分間に1,491円のスループットとなることに注目せず、売値と経費の単純なる差引きだけで収益性の判断をしてしまうことの「怖さ」を示しています。

※ このように、生産システムにおける制約を意識していない「従来の原価計算システム」では、間接費の配賦を行わないとしても、最適製品ミックスを導くものではないことに注意しましょう。

次回は、生産ラインでのスループット評価について書きます。