今回は、スループット会計(3)で出題しました演習問題の中の、稼働率改善の問題について書きます。

スループット会計(3)での演習問題(稼働率改善の解答)

稼働率改善の問題を考える場合も、まず制約工程(設備)を知ることが重要です。

2.稼働率改善の問題

<工程フロー>

材料投入 → 設備A → 設備B → 設備C → 製品

<生産条件>
設備A 設備B 設備C
見かけの能力 100個/日 80個/日 120個/日
実際の能力 75個/日 64個/日 84個/日
設備稼働率 75% 80% 70%

・この製品1個のスループットは、10,000円とする。

稼働率問題の図

問1.現在の1日の獲得スループットは、いくらか?

答え

この工程フローにおける最大生産能力は、制約(ネック)である設備Bが決定しています。

よって、この工程の最大生産量は64個/日であり、製品1個のスループットは10,000円であるため、1日の獲得スループットは、640,000円/日となります。

1日の獲得スループット : 640,000円/日 = 64個/日 × 10,000円/個

稼働率問題(1)解答

問2.設備Aの稼働率を80%に改善した場合、1日の獲得スループットはいくらか?

答え

この工程フローの制約は設備Bのため、設備B以外の稼働率をいくら増やしても完成数は変わりません。よって、完成数は64個/日で変わらず、1日の獲得スループットは640,000円となります。

しかし、制約設備前の設備Aの稼働率を上げると、設備Aの生産量は増えるため、設備Bの前に仕掛が増えます。

1日の獲得スループット : 640,000円/日 = 64個/日 × 10,000円/個

稼働率問題(2)解答

問3.設備Bの稼働率を85%に改善した場合、1日の獲得スループットはいくらか?

答え

設備Bは制約工程のため、能力UPはそのまま完成数のUPにつながります。よって、完成数は68個/日に増え、1日の獲得スループットは680,000円となります。

また、制約工程である設備Bの能力UPにより、設備Bの前の仕掛は減少します。

1日の獲得スループット : 680,000円/日 = 68個/日 × 10,000円/個

稼働率問題(3)の解答

問4.設備Cの稼働率を75%に改善した場合、1日の獲得スループットはいくらか?

答え

設備Cは非制約工程のため、能力UPにはつながらず完成数は変わりません。よって、完成数は64個/日で変わらず、1日の獲得スループットは640,000円となります。

また、制約設備の後工程になる設備Bの能力UPでは、仕掛りに変動はありません。

1日の獲得スループット : 640,000円/日 = 64個/日 × 10,000円/個

稼働率問題(4)の解答

まとめ

稼働率の改善を行う場合は、制約工程(設備)の改善が一番効果を表わします。

しかし、非制約工程での稼働率改善は直接的な効果はありませんが、能力UPにより保護能力が向上し、ラインを安定稼働させることが可能になります。

※保護能力とは、制約工程以外の工程が何らかのトラブルにより、制約工程の生産を脅かすことの無いように、非制約工程が持つべき能力の余裕のことです。