今回は、スループット会計(3)で出題しました演習問題の、不良率改善の問題について書きます。
スループット会計(3)の演習問題1.不良率改善の問題で、売値・材消費を記載するのを忘れてしまいましたので、訂正とお詫びを申し上げます。
スループット会計(3)での演習問題(不良率改善の解答)
不良率改善の効果を検討するためには、使用材料費の変化と生産量の変化を掴むことが必要です。
特にTOCでは、生産量の変化を試算する考え方が、従来の考え方と大きく変わりますので、生産量の試算手順を、問1を例として以下に示します。
- 制約設備を知る。(設備B=1,500個/日)
- 制約設備の良品生産量を計算する。(設備B=1,425個/日)不良率5%
- 制約設備の後工程の良品生産量を計算する。(設備C=1,353個/日)不良率5%
- 制約設備のために必要な、前工程の材料投入量を知る。(設備A=1,579個/日)不良率5%
1.不良率改善の問題
<工程フロー>
材料投入 → 設備A → 設備B → 設備C → 製品
<生産条件>
設備A | 設備B | 設備C | |
---|---|---|---|
実際の加工能力 | 2,000個/日 | 1,500個/日 | 2,500個/日 |
不良率 | 5% | 5% | 5% |
・製品1個の売値は1,500円、材料費を500円とする。
・検査は、各設備前で行って不良品を取り除いている。
・先頭の材料投入は、あらかじめ不良率を考慮して投入しているものとする。
問1.現在の1日の「獲得スループット」「損失材料費」「その差額」は、それぞれいくらか?
答え.
①獲得スループット(T) : 1,353,000円
設備Bの生産量 : 1,425個/日=1,500個/日×0.95
製品になる数 : 1,353個/日=1,425個/日×0.95
獲得スループット : 1,353,000円/日 =1,353個/日×(1,500円-500円)
②損失材料費(I) : 113,000円
設備Aの生産必要量 : 1,579個/日=1,500個/日÷0.95
損失材料費 : 113,000円/日 =(1,579個/日-1,353個/日)×500円
③差額(T-I) : 1,240,000円
差額 : 1,240,000円/日 =1,353,000円/日-113,000円/日
※ 設備Bが制約工程(ネック工程)である。
問2.設備Aの不良率を改善して2%にした場合の①②③は、それぞれいくらか?
答え.
①獲得スループット(T) : 1,353,000円
設備Bの生産量 : 1,425個/日=1,500個/日×0.95
製品になる数 : 1,353個/日=1,425個/日×0.95
獲得スループット : 1,353,000円/日=1,353個/日×(1,500円-500円)
②損失材料費(I) : 88,500円
設備Aの生産必要量 : 1,530個/日=1,500個/日÷0.98
損失材料費 : 88,500円/日=(1,530個/日-1,353個/日)×500円
③差額(T-I) : 1,264,500円
差額 : 1,264,500円/日=1,353,000円/日-88,500円/日
※ 設備B(制約設備)がスループットを決定しているため、非制約設備である設備Aの不良率低減は、スループットには影響せず、投入材料費のみの削減効果となる。
問3.設備Bの不良率を改善して2%にした場合の①②③は、それぞれいくらか?
答え.
①獲得スループット(T) : 1,396,000円
設備Bの生産量 : 1,470個/日=1,500個/日×0.98
製品になる数 : 1,396個/日=1,470個/日×0.95
獲得スループット : 1,396,000円/日=1,396個/日×(1,500円-500円)
②損失材料費(I) : 91,500円
設備Aの生産必要量 : 1,579個/日=1,500個/日÷0.95
損失材料費 : 91,500円/日=(1,579個/日-1,396個/日)×500円
③差額(T-I) : 1,304,500円
差額 : 1,304,500円/日=1,396,000円/日-91,500円/日
※ 設備Bの不良率改善は、投入材料費の削減に加え、制約設備の能力向上が図れるため、獲得スループットの向上も同時に図られる。
問4.設備Cの不良率を改善して2%にした場合の①②③は、それぞれいくらか?
答え.
①獲得スループット(T) : 1,396,000円
設備Bの生産量 : 1,425個/日=1,500個/日×0.95
製品になる数 : 1,396個/日=1,425個/日×0.98
獲得スループット : 1,396,000円/日=1,396個/日×(1,500円-500円)
②損失材料費(I) : 9,150円
設備Aの生産必要量 : 1,579個/日=1,500個/日÷0.95
損失材料費 : 9,150円/日=(1,579個/日-1,396個/日)×500円
③差額(T-I) : 1,304,500円
差額 : 1,304,500円/日=1,396,000円/日-9,150円/日
※ 設備Cでの不良率改善は、制約設備Bが生産した製品を良品にするため、投入材料費の削減と獲得スループットの向上が図られる。
結果の比較
上記4つの問題を表で比較してみます。
獲得スループット | 損失材料費 | 差額 | 利益の増加額 | |
---|---|---|---|---|
改善前 | 1,353,000 | 113,000 | 1,240,000 | 0 |
設備Aの不良率2%改善 | 1,353,000 | 88,500 | 1,264,500 | 24,500 |
設備Bの不良率2%改善 | 1,396,000 | 91,500 | 1,304,500 | 64,500 |
設備Cの不良率2%改善 | 1,396,000 | 91,500 | 1,304,500 | 64,500 |
不良率の改善は、制約工程の前と後ろで改善効果に大きな差が発生します。
まとめ
不良率の改善では、制約工程の前工程を改善する場合と、制約工程以降を改善する場合で、改善効果に差が発生します。(優先すべきは、制約工程以降での不良率改善である)