今回はCCPMで使われる用語や、CCPMの解説の中で出てくる用語などをまとめてみました。
TOC CCPMで使われる用語
【CCPM】 Critical Chain Project Management(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)
・プロジェクトと呼ばれる新商品の開発やコンピューターシステムの開発、土木事業や橋の建設工事といった公共事業など、二度と同じ作業の無い活動で「業務内容や作業時間などに不確実性の高い業 務」及び、航空機・船舶・鉄道車両などの製造活動で、「製造期間の長い製品の製造業務」などのプロジェクト業務に適応した管理手法です。
プロジェクトBF(バッファ) ・・・ プロジェクトの最後に配置されるバッファで、プロジェクトの納期を不確実性などの影響から守るために配置される時間的余裕です。
(プロジェクトの進捗管理にも利用され、その侵食状態によりアクションを決めるのにも利用)
合流BF(バッファ) ・・・ クリティカルチェーン上のタスクと、他のタスクが合流する場所に配置されるバッファで、クリティカルチェーン上のタスクが、合流側のタスクの遅れにより遅れることがないように配置される時間的余裕です。
リソースBF(バッファ) ・・・ 同一リソースを使うタスク同士が、前のタスクの遅れにより、後のタスクが遅れることがないように配置される時間的余裕です。
<基本となる考え方>
- プロジェクト業務は、必ず初期の予定より遅れる。
- プロジェクト業務には、100%同じ仕事はほとんど無い。
- プロジェクト業務には、多くの不確実性が含まれている。
- プロジェクト業務は、多くの人が関わって遂行されている。
- プロジェクト業務の計画時間には、多くのサバ(安全余裕)が含まれている。
- プロジェクト業務は、一つひとつのタスクを守るのではなく、プロジェクト全体を守るべきである。
- プロジェクトを行う担当者の多くは、複数のタスクに関わっている。
【プロジェクト】 Project
・Wikipediaで検索しますと、
プロジェクト(英: project)は、何らかの目標を達成するための計画を指す。
どちらかと言えば、小さな目標の達成のためのものではなくて、大きな目標を集団で実行するものを指すことが多い。
その計画の実現のためのタスク(仕事)の実行までを含めて指すこともある。
PMIが制定しているPMBOK(第3版)の定義では、「プロジェクトとは、独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である。」とされている。
プロジェクト活動とは、「ある特定の目的を達成するための活動で、開始と終了が明確に定義されており、比較的大きな目標を集団で実行する活動」であるといえます。
【タスク】 Task
・Wikipediaで検索しますと、
タスク(task)は、「作業」「学業」「仕事」などの意味。
コンピュータソフトウェア工学においては、その処理の単位。システムソフトウェアや応用範囲により意味が異なる。 (プロセスと同義。)
CCPMでは、プロジェクトに含まれる個々の作業の単位を示しています。
【クリティカルパス】 critical path (最長経路・臨界経路)
・Wikipediaで検索すると、
プロジェクトマネジメントにおいてクリティカルパス(経 路)とは、必要な時間を積算したときに最長となる一連の活動を意味する。
これによって、プロジェクト完了までにかかる最短時間を決定できる。クリティカル パス上の活動に遅延が生じると、プロジェクト完了予定日に直接的な影響が生じる。
すなわち、クリティカルパスにはフロート(余裕時間)が全くない。
1つの プロジェクトに複数の並行するクリティカルパスが存在することもある。
クリティカルパスと並行していてフロートのある経路は、準クリティカルパス、または 非クリティカルパスと呼ぶ。
これらの結果により管理者は活動を優先順位付けでき、プロジェクトの管理を効率化できる。
そして、活動群をさらに並行に実施できるようにしたり (ファストトラッキング)、クリティカルパスにさらにリソースを投入して期間を短縮させたりすることで、プロジェクト全体をより早期に完了させることもで きる。
【クリティカルチェーン】 CC:Critical Chain
・プロジェクト業務の作業時間を算出する場合、プロジェクト内の各タスクを実行順序でつなげていくと、プロジェクトのネットワークが形成される。そしてこのネットワーク上で最も長い作業経路をクリティカルパスと呼び、プロジェクトの作業完了に要する所要時間が決定される。
しかし、クリティカルパスではタスク同士の依存関係は考慮されているが、基本的にリソースの量を考慮していないため、リソースの競合による実行不可能な所要時間となってしまう場合がある。
TOCでは、この「リソースの競合がプロジェクトを遅らせる非常に大きな問題である」として、作業量とリソースの量を考慮したネットワーク上で最も長い作業経路を、クリティカルチェーンという。
上記プロジェクト図の色は、同一リソースを表わします。この図では水色と橙色のリソースが、二つのタスクに必要であり、同時に処理することができないためリソースの競合を、タイミングのずらしにより回避させている。
【ネットワーク図】 network diagram
・@IT情報マネジメント用語辞典によると、
土木建築の作業工程や製造業の生産工程、プロジェクト作業などの手順(タスクやアクティビティ同士の依存関係、時間的従属関係)をネットワーク(有 向グラフ)の形状に表した図のこと。スケジュール計画立案や工程短縮の検討などに利用される。
土木建築の世界ではネットワーク工程表、プロジェクト管理で はプロジェクト・ネットワーク図、あるいはPERT図などとも呼ばれる。
PMBOKなどのプロジェクトマネジメント技法では、まずWBSですべてのアクティビティを洗い出し、各アクティビティの関係をネットワーク図で明らかにしてそれを実際に行う順序を定めるという形で、プロジェクト・スケジュールを計画する。
一方、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメントではあまり詳細に工程を分解せず、工程の後ろ(最終成果物)からネットワークを作成することを推奨している。
【プロジェクトバッファ】
・TOCのCCPMでは、プロジェクトの計画作成時に各タスクに含まれる「サバ」を取り、作業が計画通り終わる確立を50%として設定するため、遅れる確立の50%が発生した場合の保護のため、プロジェクトの最後にプロジェクト全体を保護するためのバッファを設定します。この最後に配置されたバッファが、プロジェクトバッファです。
プロジェクトバッファは、クリティカルチェーン上にある各タスクに入れられていた時間的余裕を一箇所に集約することで、今まで個々のタスクだけにしか対応できなかった時間的余裕を、どのタスクが遅れても対応できるようにしています。
更に、個々のタスクにあった時間的余裕を一箇所に集約することで、クリティカルチェーン上にあった時間的余裕を減らすことができ(分散の加法性)、プロジェクト全体の計画時間を短縮することができます。
また、プロジェクトの進捗状況とプロジェクトバッファの侵食率(遅れにより使用されたバッファの残量)により、プロジェクトの危険度を知ることができます。
【合流バッファ】
・多くのプロジェクトは、複数のタスクが合流しながら進められて行きます。そのため、クリティカルチェーンに合流するタスクの遅れが発生すると、クリティカルチェーン上のタスクを遅らせる可能性があります。また、合流するタスクの作業時間見積りも50%確立で設定されるため、クリティカルチェーンに合流するタスクの最後に、時間的余裕(バッファ)を配置し遅れへの対応を行う必要があります。この合流部分に配置されたバッファを合流バッファと呼びます。
この合流バッファは、プロジェクトバッファによっても保護されているため、確保される時間は比較的少なく(場合によっては0として)配置されることもあります。
【リソースバッファ】
・プロジェクト活動の時間見積りを行う際は、そのプロジェクトに含まれる各タスクの時間を基本としたPERT図を作り、日程を決めていきます。
しかし、PERT図では各タスクに利用されるリソースの数と、必要な時に使えるリソースの数については、あまり考慮されていないために、使いたいときに使えないなどの障害が発生していました。
そのため、CCPMでは同時に必要なリソースの数と実際に使えるリソースの数を見て、タスクに割り当てます。しかし、リソースの数には限りがありますので、前のタスクが終了してから次のタスクへ切り替える必要があります。この時、違う仕事に切り替えるための段取り時間を考慮したり、前のタスクの遅れにより次のタスクが予定日になっても着手できないことが発生するため、同一リソース間にこの遅れを吸収するためのバッファを置くことで、プロジェクト納期を保護します。このように、リソースの競合や遅れからプロジェクトの納期を守るために設定されるバッファがリソースバッファです。
また、プロジェクト間でのリソースの競合は、ほとんど考慮されていないといってもよいでしょう。そのため、他のプロジェクトとのリソースの競合や同一リ ソースのマルチタスクによる遅れが発生し、プロジェクトは遅れてしまいます。このような場合でも、プロジェクト間でのリソースの競合や遅れが出ても、納期 を守れるようにリソースバッファを設定します。
【3つの管理ゾーン】
・CCPMでは、プロジェクトの進捗率とプロジェクトバッファの消費量により、実行すべきアクションを3つの管理ゾーンで区分している。
安全ゾーン(グリーンゾーン)は、プロジェクトの進捗度合いに比べプロジェクトバッファの消費量が少ないため、タスクが遅れても遅れを取り戻すための行動をしないゾーンとしている。
注意ゾーン(イエローゾーン)は、プロジェクトの進捗度合いに対しプロジェクトバッファの消費量は、まだ納期に影響を及ぼすレベルではないが、危険ゾーンに近づいていると判断されるため、危険ゾーンに入ってしまった場合に「直ちに遅れを取り戻す行動」ができるように、その時の対策や準備をするゾーンとしている。
危険ゾーン(レッドゾーン)は、プロジェクトの進捗度合いに比べプロジェクトバッファの消費量が著しいため、プロジェクト納期が脅かされていると判断できるため、直ぐに遅れを取り戻す行動をするべきゾーンとしている。
3つのゾーンの傾きは、プロジェクトが進むにつれて危険度が減少して行くと考えられるため、右肩上がりの直線で設定されることが多い。
また、傾きの角度としては対象となるプロジェクトの内容(難しさ)により変化させる必要がある。
【リソースマップ】
・リソースマップとは、自部門だけでなく社内もしくは関係会社も含め、設計やプログラミング・設備メンテナンス・・・といった専門的な技術を持った人達がどれだけいるか(言い換えれば、現在の最大能力がどこまであるか)を示したものであり、社内にあるリソースを最大限に有効活用するために利用される。
通常は、スキルレベルで表わされることが多いが、実際には自部門だけのマップより、社内全体でのマップを作成することで、一時的な最大能力を極限まで引き上げることができる。