今回は、CCPM導入初期によく発生する問題について書きます。
CCPMは、プロジェクトと呼ばれる業務に適した、運用(計画・実行・管理・対策)のための技法です。
しかし、プロジェクトに参加している・動かしていると感じているのは、スタッフと呼ばれる人達だけではないでしょうか?私はいままでの経験上、方法論の前にこのような問題が、実は結果を大きく左右すると感じています。
CCPM導入初期に発生する問題
- 計画作り時のサバ取り意識が、徐々に薄れていく。
- 計画作りにばかり目が行き、実行する現場の活動に目が向かない。
- 遅れが発生しても、問題の発生している部署にお任せになる。
- 遅れ対策が、残業・休出などの暫定対策だけで終わる。
- マネジメントの問題に対し、管理職の参画意欲が薄い。
以下、それぞれの問題に対し解説します。
計画作り時のサバ取り意識が、徐々に薄れていく。
CCPMで特徴的な点として、計画時のサバ取りが挙げられます。
しかし、CCPM導入当初は、このサバ取り行為によりプロジェクト期間を大幅に短縮できることがで、真剣に取組みますが、このサバ取り行為は、以下の理由から徐々に薄れていきます。
同じことの繰り返し(サバ取り=50%見積り)によるマンネリ化
基本的に計画作りは、計画担当者の仕事となっています。
そのため、CCPM導入当初は、珍しさも加わり関連する工程の担当者が一同に集まりムダ取りに取組みますが、同じことの繰り返しということで、徐々に参加人員が減り、最後は計画担当者のみが残され、計画作りのマンネリ化が始まります。
そのため計画担当者は手間のかかるサバ取りをしなくなり、今までの経験による時間見積りや作業手順作りに戻ってしまうこともよくあります。
更に、50%見積りという言葉だけが残り、まだ取れるサバを取る行為になかなか目が向かなくなります。
取り除けるサバの量が徐々に少なくなる
プロジェクト業務と言えども、材料調達や基本ユニットの組立などは、過去に実施した業務内容と大きく変わらないものです。
そのため一度サバ取りを行うと、もう取れるサバは無いと考えられ、過去の作業時間・作業手順(過去にサバ取り行った)をコピーして使うようになります。
しかし、一度サバ取りを行ったとしても時間短縮は可能なのです。
なぜならば、同様のタスクを行う際には、過去に比べリスクが極端に少なくなり、作業者の試行錯誤も少なくなるからです。
また、作業への慣れやコツもつかめてくるなど、まだまだ時間短縮は可能なのです。ただ、その短縮量が初回に比べ少ないということもあり、あまり実施されないようです。
計画作りにばかり目が行き、実行する現場の活動に目が向かない。
CCPMというと、どうしても計画作りでのサバ取りに意識が向きますが、実は、作業実行時の問題が全体の半分以上を占めているこということを、理解している人は少ないようです。
CCPMと従来の管理技法の違いを見ていただくと解かると思いますが、マルチタスク・早期完了の未報告・学生症候群などは全て、作業現場で起きている問題なのです。
しかし、プロジェクト業務=スタッフの仕事と考える人が多く、スタッフ業務の改善ばかり考えて、実際に作業を行う現場の改善にはほとんど手が打たれません。
また、現場の改善が進まないもう一つの理由として、職制の問題があります。
基本的にプロジェクトを運営するのは「開発や生産技術」であり、実際の作業を行うのは「製造や外注」といった職制の違いがあり、直接業務に関与することが難しいという問題があるのです。
遅れが発生しても、問題の発生している部署にお任せになる。
他部署の問題は、自分にはどうしようもないと思うのは当然でしょう。
しかしTOC活動は、全体最適の考え方で動かなければ成果は出ません。
ただ、他部署の問題は自分の業務と直接関係が無いため、対策を考えましょうと言われてもなかなか思いつかないものです。そのため、発生した問題は発生した部署で考え、対策を打つことになります。
しかし、よく考えてみてください。問題が発生しているということは、発生している部署が一番良く知っているはずです。そして、その問題を対策できなかったから、今、遅れが発生しているのです。
遅れ対策が、残業・休出などの暫定対策だけで終わる。
CCPMでは、プロジェクトバッファが注意ゾーン(黄色)に入ると、危険ゾーン(赤色)に入った時に実施すべき対策を検討・決定しておくことになっています。
しかし、CCPM導入当初は検討されていた対策も、「実施するか」「実施しないか」解からない対策となると、真剣には考えないものです。また、もし考えたとしても、どこまで真剣に考えられるでしょうか?
このような問題から、ほとんどの遅れ対策は安易な残業・休出という暫定的な対策に偏ります。
しかし、残業や休日出勤はその時指示すれば良いだろうと考えるため、予定はされず労働時間の問題や、作業者の都合などにより、必ず実行できるとは限らないのです。
また、残業・休出は利益を減らしてしまうことは、言うまでもないでしょう。
マネジメントの問題に対し、管理職の参画意欲が薄い。
プロジェクト業務のほとんどは、企業における重要課題であり、その内容は、開発案件・重要顧客案件・企業戦略案件など多岐にわたります。また、このプロジェクトを推進する部署も様々です。
しかし、多くのプロジェクト案件を実行し、形にするのは製造部門です。
そして、製造部門は標準品の生産を行い、試作の生産や受注品の生産を行っています。
このような状況下で、製造部門には以下のような納期問題が発生します。
- 標準品を生産し、顧客に納めるための納期
- 試作品を生産し、営業担当・開発担当に収める納期
- スポット受注品を生産し、顧客に収めるための納期
- 原価低減プロジェクトを、納期までに達成する
そして、これらの納期は全て守らなければならないものであり、依頼元からすれば全てが最優先な課題なのです。
製造部門が依頼される作業の一例を、下記に示します。
区分 | 目的 | 主な要求元 |
---|---|---|
標準品製造 | 顧客のニーズに応えることで、顧客の信頼を得る | 業務部門 |
開発品製造 | 次の商品となる開発品を、他社よりもいち早く市場に出す | 開発部門 |
スポット品製造 | 少しでも儲けを増やす。顧客のニーズに応える | 営業部門 |
原価低減PJ推進 | 利益を増やす。価格競争力を付ける | 製造部門 |
これ以外にも、製造部門には設備導入や人材育成など多くの課題があります。
しかし、製造部門のリソースには限りがあり、同時に実行できる案件も限られるのは当然です。では、どのように対応したらよいのでしょうか?
CCPMでは、「管理者が優先順位を付ける」ということを、指導しています。
例えば、あなたが製造部門の担当者だったとして、全てが最優先で要求されている業務であり、その要求量が製造部門のキャパシティーをはるかにオーバーしているとしたら、この業務の中からどれを優先して作業したらよいかを、決められるでしょうか?
実情は、ほとんどの企業で「いいえ」です。
このような部門が違う業務の優先度や、顧客が違う製品の優先度、目的の違うプロジェクトの優先度などは、部門間の調整が難しい。遅れた業務の責任をどの部署が取るのか。などマネジメントの理由から、管理者が決定しなければならないのです。
しかし管理職と言えども、このような煩わしい問題に顔を突っ込みたくないのが本音であるため、マネジメントの問題が発生するたびに、決定を先延ばしにしてしまうのです。
このようにマネジメントの問題には、管理職の参画意識が薄いのです。
まとめ
CCPMでは、P:計画→D:実行→C:チェック→A:アクションの、それぞれのサイクルで実行すべきことが明確に示されています。
しかし、導入当初は多くの部門・多くのキーマンが参画しますが、進め方が定着しだすと、マンネリ化・横着心・臭いものには蓋をするなどの心が働き出し、徐々に活動が薄れていきます。
そのため、定期的な活動の見直しが必要だと考えます。