前回は、CCPMによるスケジューリングの特徴として、「サバ取り」について書きました。
今回は、CCPMのスケジューリングにおけるバッファの役割と、活用方法について書きます。
CCPMにおけるバッファの活用
バッファについては、TOC講座の「DBR:ドラム・バッファ・ロープ」で、一度説明しました。
DBRにおけるバッファの機能は、「前工程の生産の揺らぎから制約工程を守る」ためのものでした。そして生産管理面では、バッファの状況(増減)を監視することにより、アクションを取るかどうかの指標として活用されます。
DBRで活用された2つのバッファの機能は、CCPMでも同様です。
CCPMでも「制約を守る」ために、バッファが配置されます。ただしCCPMでの制約は、特定の工程ではなく、プロジェクトそのものです。
CCPMでは、プロジェクトを「予定納期までに、機能や品質を落とさず遂行させる」ことが、制約を守るということになります。
更に、「プロジェクトが予定通り進んでいるか?」「アクションを今、取るべきかどうか?」などの進捗管理や、「プロジェクト全体としてのマネジメント判断資料」としても活用します。
ではまず、「3.CCPMによるスケジューリング方法」の続きとして、バッファの挿入について書きます。
《 CCPMのスケジューリング手順 (続き)》
前回までで、1)プロジェクトの定義、2)プロジェクト・ネットワークの作成、3)サバ取り、が終わりました。
次に行う作業は、不確実性からプロジェクトを守るための「バッファ」を入れることです。
4)バッファの挿入
挿入すべきバッファは、プロジェクトバッファ、合流バッファ、キャパシティバッファの3種類があります。
3種類のバッファの挿入の前に、サバ取りをどこまでやれば(どれだけ取れば)よいか?について、 少し書いておきます。
サバをどこまで取るか?
まず、「皆さんの計画にはサバが入っていますから、サバ取りをします」「皆さんサバを取ってください」といっても、ほとんどの人は「サバなんて入っていません」と答えるでしょう。
なぜか?については、前回・前々回で説明しました。(人間行動の問題です)
そして不確実性の高い業務の見積りでは、不確実性が発生しても80%、99%出来る時間を設定します。そのため、出来るか出来ないか50%の確率で、時間見積りすることは書きました。
よって、サバ取り前の時間を基準にして、約50%(半分)になったかをひとつの指標とするとよいと思います。
しかし、慣れてくれば最初から50%確率の見積りが出来るようになりますので、この時間を更に減らそうとはしないで下さい。(労働強化になりかねません)
《 3つのバッファ 》
①プロジェクトバッファ:プロジェクト全体(クリティカルパス)を守るためのバッファ
まず、クリティカルパス(計画時点ではクリティカルパスと同じ)を見つけ、その合計時間を算出します。(サバ取りが終わった後の時間)
次に、このクリティカルパスの合計時間の半分の時間を、プロジェクトバッファとしてプロジェクトの最後のタスクと納期の間に入れます。
このままでは、プロジェクト期間は短くなりましたが、納期遅れを引き起こす可能性が50%あります。
そこで、納期遅れを引き起こす不確実性から、プロジェクト全体を守るためのバッファを配置します。
プロジェクトバッファは、サバ取り後のプロジェクト期間の、半分の期間を配置します。
なぜ、プロジェクト期間の半分をバッファとして配置するかというと、
- 各タスクが遅れる確率が、50%であること。
- 今まで各タスクに付けられていた「サバ」は、それぞれのタスクにしか対応できなかったこと。
- プロジェクトバッファは、全てのタスクの遅れに対応できること。
- 全てのタスクが、遅れるわけではないこと。
などから、取り除いた「サバ」を全て、プロジェクトの後ろに付けて「バッファ」とするには多すぎますし、
遅れの確率は50%であるため、「プロジェクト期間の半分」をバッファとして配置するのです。
②合流バッファ:他のタスクの遅れから、プロジェクトを守るためのバッファ
合流バッファは、クリティカルパスに合流する「他のタスク」の遅れから、クリティカルパスとなるタスクを守るために配置されるバッファです。(DBRにおける組立バッファに当たります)
バッファのサイズは、合流するタスクの半分(50%)の期間で配置します。
③キャパシティバッファ:制約となるリソースの遅れから、プロジェクトを守るためのバッファ
キャパシティバッファは、限られたりソース(制約)の遅れから、プロジェクトを守るために配置されるバッファです。
バッファのサイズは、他のバッファほどは必要なく、10%程度でよいと考えます。(理由は、このタスクは既に、プロジェクトバッファで守られているからです)
5)作業開始日のずらし
従来の計画立案では、作業開始日にならなくても時間的な余裕があれば、タスクを早めにスタート(着手)することが常識でした。
しかしCCPMでは、納期に間に合うのであれば、出来る限り遅く着手します。
その理由は、プロジェクトに時間的余裕を作ることになるからです。これは、サバ取りを行う理由と同じです。更に、マルチタスクの原因にもつながります。
ここまでで、CCPMによるスケジューリングは終了です。
次回は、CCPMによる「プロジェクトのマネジメント方法」について書きます。