今回は、CCPMで使われる用語の中で、現象を表した用語について書きます。

TOC CCPMで使われる用語

【サバ】

サバ読みをWikipediaで調べると、

鯖読み(さばよみ)とは、年齢や体のサイズ(身長・体重・3サイズ)などをごまかす事。慣用句の「鯖を読む」を名詞化したものである。

鯖は大量に捕れるが鮮度の低下も早い。

現在のような冷凍技術を持ちえなかった昔の漁師や魚屋は、時間を惜しんで鯖の数量を目分量でざっと計測して、痛む前に急いで売りさばいた、という逸話から、「自称でしかないいい加減な数値」という意味合いへ変化したとの説がある。

・CCPMでいうサバとは、プロジェクトなど不確定要素の高い作業の計画に対し、作業の遅れが発生しても納期を守れるように、予め正味時間より多めに付加されている時間のことで、安全余裕とも呼ばれています。

CCPMでは、この「サバ読み」がプロジェクトを遅らせる大きな要因の一つとしています。

通常このサバは、時間見積りの時に作業時間の中に組み込まれているため、どのタスクにどれ位の時間が安全余裕として含まれているか分かりません。(担当者としては、計画の見積り時間にサバなど入っていないと言うのが普通です)

<サバが入っていることにより発生する問題>
  • プロジェクト期間が非常に長くなり、計画段階で予定納期に間に合わなくなる。
  • 担当者は余裕時間が入っていることを知っているため、計画通りに作業を行わない。
  • 計画段階で納期に間に合わないと、どうせサバがある勝手に計画時間をカットされてしまう。
  • 時間的な余裕があるため、他の仕事に手を出してしまい納期遅れが発生する。
<サバが入る原因>
  • 今まで行ったことのない作業や、使ったことのない設備や道具を使うため、どんな問題が発生するか不安なため。
  • いつも予定通り終わらない(予定より遅れる)ため。
  • 部品や機器の納入が遅れることが過去に多々発生している。
  • 仕様変更が作業途中でいつも発生する。
  • 作業予定に組み込まれていた作業者が、必要な時に確保できないことが度々起きている。
  • 予定(期間)通り終わらなければ、上司に怒られる。
  • 最初の期間見積りは、後で必ずカットされる。

サバは、上記のような不確定要因に対する作業者の自己防衛的な行動から生まれます。

CCPMでは、このサバがプロジェクトの計画期間を長くしている大きな原因として、正味作業時間と安全余裕に分けることで、計画段階での期間短縮を図るよう指導しています。(ただし、安全余裕をプロジェクトの期間から全て除くのではなく、有効的に集約させる方法で活用するということです)

通常プロジェクトのサバ(安全余裕)は、プロジェクトの各タスクに作業時間として含まれていますが、その余裕時間の配分率は様々です。

このサバを取るには、計画立案時にその作業に詳しい人を参加させ「この作業だけに集中し(シングルタスクで集中して作業)、50%確率(確率として半分は予定より遅れても良い)として見積もった場合の期間はどれくらいかかるのか?」を聞くようにすることでサバを除きます。

なお、このような計画立案が出来ないとした場合は、従来通りの計画期間を大ナタを振るい半分の期間(50%)に設定し、プロジェクトバッファとしてカットした50%の見積もり期間をさらに半分にした期間(50%)を、プロジェクトバッファとして付加するという方法をとります。

(ただし、このような方法をいつまでも続けることは好ましくありませんので、導入初期に止めるべきだと私は思います。→なぜならば、半分にされることが分かるとそれを見越して「サバ」が入るからです。)


【マルチタスク】

マルチタスクをWikipediaで調べると、

マルチタスク は、コンピュータにおいて複数のタスク(プロセス)を切り替えて実行することができるシステムのこと。マルチプログラミングマルチプロセスともいう。逆に、同時に一つのタスクしか実行できない方式をシングルタスクという。

・CCPMでいうマルチタスクとは、一人が一つのタスクを終了する前に他のタスクに着手することを指しています。

この時、先に着手していたタスクは当然作業途中で中断されるため待ちとなりますが、担当者は他のタスクの作業を行っているため、自分の担当している仕事が滞っているという感覚が乏しくなります。

更に、他のタスクの作業を進めている間に、先に始めていたタスクの関係者から早く終わるように督促が入ると、今着手している作業を中断して先に始めていたタスクを再開するとういように繰り返すことで、見た目では複数のタスクがいかにも同時に作業が進行しているように見えます。

しかし、タスクを切り替えるときには「必要な資料」や「情報」などを入れ替えなくてはならず、頭の中も切り替える必要があり、切り替えるたびに「段取り」時間が必要になるため、一つ一つタスクを終了させて行くより全体的に長い作業時間がかかることになります。

また、マルチタスクは関係するほとんどのプロジェクトの終了時期が、当初の予定期間より遅くなります。

<マルチタスクにより発生する問題>
  • タスク終了時間の遅れ、プロジェクト完了納期の遅れ(リードタイムが長くなる)
  • タスク進捗遅れが分かりづらい(見た目は予定通り進んでいるように見える)
  • 担当者の作業効率が悪い(目に見えづらい段取りが多い)
  • 多くのプロジェクトへの影響が発生する
  • タスク担当者本人の問題意識が薄れる(「忙しい=頑張っている」と勘違いする)
<マルチタスク発生の原因>
  • 各プロジェクトの優先度が明確にされていない。(プロジェクト担当者同士の調整不足)
  • 一人の作業者に仕事が集中している。(専門性のある業務担当者の不足)
  • 1つのタスク期間が長すぎる。
  • プロジェクトの進捗遅れによる必要リソースのタイミング的競合。

CCPMでは、このマルチタスクがタスク時間やプロジェクト期間を遅らせる原因であるとして、各プロジェクトの優先順位付けを明確にするよう指導しています。

また、特定作業者への負荷集中なども要因の一つであるため、特定作業における会社全体でのリソースマップ作りを行うことと、必要な技術の多能工化をすすめることを推奨しています。


【早期完了の未報告】(パーキンソンの法則)

パーキンソンの法則をWikipediaで調べると、

パーキンソンの法則Parkinson’s law)とは、1958年、英国の歴史学者・政治学者シリル・ノースコート・パーキンソンの著作『パーキンソンの法則:進歩の追求』、およびその中で提唱された法則のこと。具体的には、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」(第一法則)、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」(第二法則)というもの。

・早期完了の未報告とは、タスクの作業が順調に進み予定期間より早く終了した際に、すぐに完了報告をせず必要以上に作業の見直しや丁寧な仕上げを行うことで、予定期間まで完了報告をしない行為を指します。

この問題は、作業内容をよく知っている人にしか分からないため、発生していることそのものを知らないことが多いようです。

<早期完了の未報告により発生する問題>
  • プロジェクト期間の見積もり(工数・予算など)を正しくできない
  • クリティカル・パス上のタスクであれば、安全余裕期間をムダに消費してしまう。
  • 予算費用を削減することができない
<早期完了の未報告が発生する原因>
  • 作業が予定期間より早く終わったことを報告すると、次回から予定期間を短縮される
  • 頑張って予定期間より早く終わらせても、自分には何もメリットも無い
  • 予定期間より早く終わったことを報告すると、別の仕事を押し付けられる

CCPMでは、早期完了の未報告が発生する原因として「評価制度」に大きな原因があるとしていますが、予定より早く終わったことを評価する仕組みを作り運用することは、意外に難しいものです。

例えば早く終わった原因が、見積もり時間の甘さや作業者スキルの違いなど計画上の問題である場合と、単に予想以上に作業が順調に進んだ場合、担当者が本当に一生懸命頑張った結果として早く完了した場合など、いろいろなケースが考えられるからです。

そのため対応策としては、私は以下のことが有効と考えます。

進行中のプロジェクトで発生させないためには、
  • リーダーが担当者の抱えているプロジェクト(タスク)を把握し、優先順位付け(作業指示)をしっかり行う。
  • 部門毎に、「今待っている作業」「今実施されている作業」「終わった作業」が、一目で分かるような見える化の仕組みをつくる。
今後起きないようにするためには、
  • 終了プロジェクトの振り返りを確実に行い、遅れた原因をしっかり把握し次回に反映させる。
  • 予定より早く終わったことへの、評価の仕組み作りを行う。


【学生症候群】

・学生症候群を@IT情報マネジメントで調べると、

学生症候群とは、納期のある作業を行う際に、余裕時間があればあるほど、実際に作業を開始する時期を遅らせてしまうという、多くの人間に見られる心理的行動特性のこと。

・仕事での学生症候群とは、タスクの計画期間または納期に多くの余裕があるため、「まだ始めなくても間に合う」「この仕事は少しくらい中断しても大丈夫だ」などという考えにより、他の仕事に手を付けてしまうことで、気が付くと余裕のあったはずのタスクの予定期間・納期が守れなくなる状況を言います。

<学生症候群が発生する原因>
  • 計画時間に多くの余裕が含まれている(サバ取り不足)
  • 作業者スキルの違いを考慮していない
  • ギリギリまで納期に引き付けた計画になっていない
  • 作業優先度が不明確になっている
<学生症候群により発生する問題>
  • 余裕のあったはずのプロジェクト納期が遅れる
  • 他のタスクやプロジェクトとのリソースの競合が発生する
  • タスクの終了予定近くになって残業・休出が増え、予算オーバーが発生する
  • あわてて作業を行うため、作業内容が雑になる

通常は上図のように、最初から手を付けないのではなく、最初に少し手を出していて途中で中断し、ギリギリで再度始めるような作業のやり方をするため、遅れ対策として担当者を切り替える(もっと熟練の人で作業の早い人)ことが、仕事の引継ぎに時間がかかるなどの理由から難しくなります。

学生症候群を無くすためには、タスクに含まれる余裕(サバ)を除くことが一番の方法です。また、タスク期間の見積り時に作業者スキルに合わせた設定をすることも大切です。

更に、来た仕事は全力で終了させることが重要です。(リレー走者のバトンタッチのように)