TOCは、「目的達成を妨げる制約を特定し、この制約を解消することにリソースを集中することで、少ないリソースを有効に活用する」ということは、前に書きました。

そしてTOCには、この制約を特定し解消するためのステップがあります。

まずは、物理制約や市場制約などの目に見える制約について活用する、「継続的改善の5ステップ」を紹介します。

継続的改善の5ステップ

継続的改善の5ステップ

解説:生産ラインの能力UPを、下図の生産ラインの例をもとに説明します。

生産ラインの例

Step-1 : 制約条件を特定する。

この生産ラインの生産能力を決めている工程は、D工程(10個/1日)であり、この工程が生産能力UPを妨げる「制約」となります。

能力グラフ

ただし、この例では既に各工程の生産能力が解かっていますが、実際に生産能力を計算する時には、その数値がどのようにして出されたか(計算根拠)を、把握する必要があります。

Step-2 : 制約条件を徹底活用する。

制約工程の能力が上がれば、生産ラインの能力が上がるわけですから、この工程(D工程)の生産能力を増やすことが、このステップです。

能力グラフ(75%,100%)

能力UPとしての対策は、IEやQC・PMなどを駆使し、制約工程の効率・稼働率・歩留りなどを向上させる。

ただし、このステップで実施する「徹底活用する」とは、新規に設備を導入したり、人を採用したりといった、お金を掛ける対策ではなく、今ある設備や作業者の持っている能力を最大限に引出すことをいいます。

Step-3 : 制約条件以外を制約条件に従わせる。

このステップでは、制約工程の生産状況に合わせて投入を行ったり、生産リードタイムを短縮するために、他工程の生産形態(ロットサイズの変更や運搬方法など)の変更を行います。

投入制御

ただし、5ステップの中でもこのステップが一番難しく、多くの企業がこのステップを実施する過程で挫折しているようです。ここで挫折する原因の多くは、前に書きました「方針制約」と呼ばれる、ルールや評価指標などです。

Step-4 : 制約条件を強化する。

このステップは、設備増強や人員採用などのお金を使う対策を含んだ、能力増強対策を行います。ただし、このステップはStep-3までを徹底的に行っても、顧客の要求を満足できない場合に実施します。

そのため、今の需要状況だけでなく将来の需要状況までを考慮し、対策の実施を考える必要があります。

Step-5 : 惰性に注意しながら、最初から繰り返す。

このステップは、Step-4で制約工程の能力を向上させたので、制約工程が変わっている可能性があります。そのため、今まで進めてきた正しい行動(制約条件にフォーカスした行動)が崩れないようにしながら、新たな制約に向けてStep-1に戻り、改善の5ステップを繰り返します。

継続的改善の5ステップは、工場内の生産能力を向上させるだけではなく、企業の収益を向上させるためのステップや企業力UPなどにも活用されます。

次回は、制約条件を克服するTOCのステップ(2)「思考プロセスの3ステップ」について書きます。