前回は、TrT(移行ツリー)について書きました。

ここまで10回に亘り書きました「思考プロセスの概要」ですが、まだまだ解からない点が多いと思います。

思考プロセスは、「人間が介在する組織の問題を解決(方針制約の打破)する」ものですから、目に見える物理的な制約の打破に比べ、難しい点が多々あります。

ですから、思考プロセスは特に、「習うより慣れろ」ということが言えます。

まずは、自分の身の周りで起きている問題(新聞の記事や家族との些細なトラブル、ボーナスの使い道など)に対して、使ってみるのが良いでしょう。

そこで今回は、思考プロセスの応用ということで、「ツリーの使い方」について書きます。

5つのツリーの使い方

1.システム的に大きな問題への対処

サプライチェーンへの対応や、企業全体へ及ぶ問題などへの対応、夢のある将来への戦略・戦術作りなどには、5つのツリー全てを使う「3クラウド法」または、「5ツリー法」を適用することが望ましいと思います。

3クラウド法

5ツリー法に比べ早くできますが、活用経験の多さに結果が左右されます。

対策へのキーとなり得る問題「何を変えればよいか?への問に答えるもの」が、いくつかに絞れる場合に活用するとよいでしょう。

3クラウド法の手順

【3クラウド法の基本的な流れ】

まず最初に、目的・対象範囲の設定及び、UDEの抽出(10程度)する。

1.対立解消図 :UDEの原因となっている中核的な対立は何にか?
2.現状問題構造ツリー :中核対立は全てのUDEの原因か?
3.未来構造ツリー :対策は新しいUDEを発生させず、全ての望ましい結果をもたらすか?
4.前提条件ツリー :何が障害となり、対策の実行が出来ないのか?
5.移行ツリー :対策を効果的に実行するには、どんな行動を取らなければならないか?

5ツリー法

3クラウド法に比べ時間はかかるが、対処すべき問題への賛同を得やすい。

中核となる問題がハッキリしない場合や、多くの問題の中から対処すべき優先度を決めたい場合などに有効です。

5ツリー法の手順

5ツリー法の基本的な流れ

まず最初に、目的・対象範囲の設定及び、UDEの抽出(10程度)する。

1.現状問題構造ツリー :全てのUDEの70%以上を占める原因(中核問題)は何か?
2.対立解消図 :中核問題を引き起こしている、中核対立は何か?
3.未来構造ツリー :対策は新しいUDEを発生させず、全ての望ましい結果をもたらすか?
4.前提条件ツリー :何が障害となり、対策の実行が出来ないのか?
5.移行ツリー :対策を効果的に実行するには、どんな行動を取らなければならないか?

2.ツリーの単独利用

(1)現状問題構造ツリー
  • 多くの問題を因果関係で構造化することにより、対策効果の大きい問題を見つけ出せる。
  • 出来上がった問題構造の明確化により、第三者との問題の共有化ができ、「何を解決しなければならないか」について、関係者間でのコンセンサスが得られる。
(2)対立解消図
  • 問題を引き起こしている原因の対立を明確化させることで、何を変えれば良いかを明確化できる。
  • 解決策の方向について、全体最適の観点から中核問題の背後にある仮定・思い込みを表面化させ、それを無効にする論理的な話し合いをすることで、解決策へのコンセンサスが得られる。
(3)未来構造ツリー
  • 対策を実施することにより、どんな良い結果がもたらされるのかを説明できる。
  • 解決策の実施によって起こるであろう障害を予測し、その対策を考えることで、解決策実行へのコンセンサスが得られる
(4)前提条件ツリー、移行ツリー
  • 解決策実施の手順と目標、実際の行動計画を明確に示せる。
  • 解決策実行への具体的な障害と、それを排除するための行動計画を討議することにより、関係者間での実行へのコンセンサスを高め、解決へのコミットメントを確かなものにする。

思考プロセスの特徴

最後に、思考プロセスの特徴をおさらいしておきます。

  1. 直観と論理の融合により、的確な対処が出来る。
  2. コミュニケーションの手段であり、コンセンサス造りのツールとして使える。
  3. 論理検証のステップにより、見落としや抜け落ちを防ぐことができる。
  4. 事実上の障害を考えながら展開するので、障害を克服することができる。
  5. 論理性・客観性により、感情的対立を回避できる。

思考プロセスの概要については、今回で終了とします。

次回からは、CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクト・マネジメント)について書きます。

ソフト開発業務、商品開発業務、プロジェクト業務などの「不確定要素の高い業務」や、航空機・船舶・鉄道車両などの「製造期間の長い製品の製造業務」、道路工事などの公共事業、このような業務に関わっている方々は必見です。