前回は、CRT(現状問題構造ツリー)作成手順の概要を説明しました。
今回は、作成の中での注意点と、中核問題選定方法について書きます。
中核問題の選定方法
まずは、CRT作成時によく発生する問題を挙げます。
CRT作成時に発生する問題
- 声の大きい人や、偉い人の意見が優先される。
- 自分の悪口を言われていると思い、感情的になる。
- 思い込みによる間違えや、理論的な抜けが発生する。
これらの問題に対しては、一人で論理検証するのではなく、複数の人で確認することが良いようです。
方法としては、一人の人が「もし~ならば、そのときは~である」と、大きな声で読み上げ、他の人達は耳を澄まして聴き、正しいかどうかを判断する。判断基準は、前回書きました「検証する項目」に基づいて行ってください。
特に、間違いやすい点として、
1.原因と結果が逆転している
例えば、
悪い例 : 家が火事である → 家から火が出ている
(読み方 : もし「家が火事である」ならば、そのときは「家から火が出ている」)
正しい例 : 家から火が出ている → 家が火事である
(読み方 : もし「家から火が出ている」ならば、そのときは「家が火事である」)
2.2つ以上の内容が入っている
例えば、
悪い例 : 「作業者が休んでいるため、生産が予定より遅れている。」
正しい例 : 「作業者が休んでいる。」 と 「生産が予定より遅れている。」
3.原因が不足している
例えば、
悪い例 :
「燃えるものがある。」かつ「発火元がある。」 ならば、
そのときは「火がつく。」
正しい例 :
「燃えるものがある。」かつ「発火元がある。」かつ「酸素がある。」 ならば、
そのときは「火がつく。」
4.曖昧な表現をしている
例えば、
悪い例 :
「人員が不足している。」
正しい例 :
「予定した人数に対し、出勤者が不足している」
なお、曖昧な表現として他に、「多い、少ない」 「大きい、小さい」 「高い、安い」 「異常、正常」など、数や量を表わすときに、多くみられます。これらについては、誰が読んでも分かるように数値を入れることを、お勧めします。
また、原因と結果を結びつける時は、不足しているカードを追加しますが、必要以上に増やさないことが大切です。どうしても、ツリーが出来上がってくると、今回の対象範囲ではないものを追加したくなります。
特性要因図やなぜなぜ分析などを習ったことがある人は、どうしても原因を深く掘り下げ、全ての原因・結果を洗い出そうとと考えてしまいます。
しかし、思考プロセスのCRTでは、最終的に「中核問題」が見つかればよいので、あまり時間をかけて細かな原因や結果を挙げなくても良いのです。
まず、このカードの中のUDEはどれになるでしょうか?
事実を知っている人は、そこの現場に作業者や品質担当者ですから、この中のカードを、「検証する項目」でチェックしてみると、
UDE1:製品より堅いものが製品に当たる
UDE2:限度以上のキズが流れる
UDE3:製品を容器に投げ込む
この4つがUDE候補であり、他のカードは仮定や思い込み、変えようの無い事実となります。
どうでしょうか?
「品質問題を思考プロセスで解く」ということは、あまり良い例ではないのですが、感覚として一番分かりやすいと思いましたので、この例で作ってみました。
ただ一番違うところは、特性要因図・なぜなぜ分析では「一番末端にある全ての原因に対策を行う」のに対し、思考プロセスでは、中核問題に対し対策を行う点にあります。
ただし、この例では「中核問題」を対策することにより「キズの発生を抑える」ことはできますが、別の要因で発生した不良を流さない対策が打てていないため、この対策を追加する必要があります。
(この抜けについては、CDR・FRTで検証・確認することができます)
手順-4 中核問題の識別
以前にも書きましたが、中核問題とは、全体の問題の70%以上に影響を及ぼしている問題のことです。
よって、この中核問題を対策すれば、ほとんどの問題は発生しないということです。
中核問題の識別
- それは、本当に取り除きたい問題なのか?
- それは、望ましくないものなのか?
- それは、全体の約70%以上の原因になっているか?
もし、中核問題が見つからない場合は、一番下になっているカードの発生要因をV字関係で探ってみてください。
最後に、中核問題らしきもの(候補)が見つかったら、その中核問題が取り除かれたらどうなるか?本当に問題のほとんどが発生しないか?を確認してみてください。ここでもし、ほとんどの問題が消えるのであれば、それが中核問題です。
ここまでの手順で、CRT(現状問題構造ツリー)の作成は終了です。
次回は、CDR(対立解消図)について書きます。