今回は、思考プロセスの5つのツリーの中から、 CRT(現状問題構造ツリー)について書きます。

1.CRT:Current Reality Tree 現用問題構造ツリー

CRTは、「何を変えるのか」を明らかにするツリーであり、システムの抱える問題構造を明確にし、変えるべき中核問題を見つけ出すツリーです。

中核問題とは、目的の達成を阻害している問題の根底にある「根っこ」の問題で、問題全体の70%に影響を持つ問題のことです。

このCRTでは、「十分条件ツリー」を使います。

十分条件ツリー

CRTにより構造化されたツリーは、進むべき方向を誰でもが認識することができ、ベクトルの合った活動が可能になります。(また、上司の説得にも有効です)

なお、このツリーは「5ツリー法」での最初のツリーとなります。

CRTの作成手順

CRT(現状問題構造ツリー)

手順-1.CRTを作成する「対象システム(企業・組織)」を、明確化する。

  1. システムの範囲、システムの目的、目的達成の必要な状態を定義する。
  2. バリューチェーンを明確化する。
  3. 目的達成を計るための、主な評価尺度を決める。

手順-2.UDE:Undesirable Effect 好ましくない結果の洗い出しと選定

まず、目的達成を阻む様々な身近な問題(UDE)を洗い出し、その中から5~10の重要なUDEを選定します。

UDEとは、
システムの目的達成を阻む様々な身近な問題であり、
根底にある根本的な中核問題によって引き起こされる目に見える症状を指します。
それぞれのUDEの因果関係をたどっていくと、それらに共通する中核問題に、
たどり着きます。(UDEは、基本的に事実でなかればなりません)

CRTは、この中核問題こそが身の回りで起こる様々な問題を引き起こし、「システムの目的達成を拒んでいる」という構造を、明らかにしてくれます。

※ そして、この中核問題こそが「変えなければならないもの」なのです。

UDE抽出方法と、メリット・デメリット
項目 メリット デメリット
ブレーンストーミング法 ・抽出した意見の賛同が得やすい
・抽出の背景をその場で聞ける
・収集時間が早い
・同一意見で候補を絞れる
・参加した人の意見だけになる
・大小さまざまな多くの意見が出る
アンケート調査法 ・多くの人の意見を収集できる
・広い範囲の意見が聞ける
・同一意見で候補を絞れる
・収集に時間がかかる
・目的に合わない意見が出る
・事実以外の意見が出る
・大小さまざまな意見が出る
ヒアリング法 ・抽出の背景をその場で聞ける
・聞きたい情報だけを収集できる
・収集に時間がかかる
・事実が隠される可能性がある
・呼ばれた人の意見だけになる

※ UDE抽出を行う場合は、手順-1の内容を良く理解してもらい、日頃感じている「不平」にならないように注意しましょう。

UDE選定の手順
  1. 目標及び必要な状態を見ながら、それらを達成するために好ましくないと思う実体を洗い出す。(実体は全社的な観点で幅広く出す)
  2. 洗い出された実体を、目標と必要状態を見ながら次の3つの観点で分類する。
    目標・必要状態の達成の障害として、その実体は、(その通りである、関係がない、何とも言えない)
  3. 上記の「その通り」を、最初のUDEとする。
    UDEに番号をつける。(ポストイットの端に番号を記入しておく)
UDEチェックリスト(下記項目のいずれかに当てはまるか?)

1.否定的な表現になっているか?
2.社内の他の人が見ても、それは否定的か?
3.社会的に見ても、その結果は望ましくないものか?
4.それは誰もが受入れられない、重要な要素であるか?
5.それはスループットに、不利益に働くものか?

※ 複数のUDEの中から、5~10の重要なUDEを選ぶ方法としては、1枚づつUDEカードを取り出し、参加者全員に「このUDEは重要か?」と問いかけ、重要と思う人数の多いものを選ぶようにすると良い。
(この時、重要とならなかったUDEカードは、捨てないで残しておく)

手順-3.UDE間の「原因と結果」の関係を、関係付ける。

選定された5~10の重要なUDEの中から関係する2つのUDEを選び、原因→結果の関係付けをする。

UDE例

※ 関係付けは、一度に1つづつ行うことが望ましい。
(同時に複数の関係付けを行ったり、数人で手分けして行うと、全体としての構造が上手くつながらない場合が多い)

結果の検証

検証する項目

1.カード単体への確認
・単語の意味はわかるか?、文章の意味はわかるか?
・現実に存在しているか?、確認できるか?
・その原因は実際に、その結果を引き起こすか?

2.カードの関係への確認
・その結果を引き起こすのに、他の原因はないか?
・その原因を取り除けば、その結果は絶対に起きないか?
・原因と結果の関係が、逆転していないか?
・その原因から必ずあらわれる、他の結果はないか?
・その結果の他に必ずあらわれる、検証できる結果はないか?

この検証作業により、不足している原因や結果・中間を補うUDEなどが追加されて行きます。
(ただし、「なぜなぜ」と掘り下げ過ぎないように、注意してください)

追加されるカードの例

検証作業でOKとなったら、次に関係しそうなUDEカードを1枚選び、原因と結果の関係付けを繰返します。

全てのUDEカードが関係付けできたら、下のカードから順に「正当性の検証方法の読み方「もし 原因 ならば、そのときは 結果 である」で順に、ツリー全体の確認を行います。
(納得のいく「問題構造」になったか?)

今回はここまでです。

次回は、CRT(現状問題構造ツリー)のつづきを、書きます。