前回は、CCPMによる進捗管理と、遅れへのアクションについて書きました。
今回は、プロジェクト管理者が行うべき、マネージメントについて書きます。
プロジェクト管理者のマネージメント
プロジェクト管理者の仕事は、「与えられたプロジェクトを予定通り完成させること」といえます。ここでいう予定通りとは、プロジェクトのQ(品質)、C(コスト)、D(納期)のことを指します。
そして、QCDを予定通り進めるには、プロジェクトを管理しなければなりません。
そしてプロジェクト管理者は、このP・D・C・Aの全ての「責任と権限」を与えられています。
しかし、プロジェクト管理者の多くは、いくつもの仕事を抱えており、マルチタスクでの仕事を、余儀なくされているのも事実です。
では、このような環境でプロジェクト管理者は、「何を」しなければならないのでしょうか?
1.計画段階
プロジェクト管理者が計画作りに関与するのか?という疑問をお持ちの方もおられるでしょうが、プロジェクトが成功するかどうかは、この計画の良し悪しに大きく左右されます。
そのため、プロジェクト管理者は、「プロジェクトの定義」を明確にする必要があります。
《 プロジェクトの定義 》
- 目的:このプロジェクトにより、何を達成しようとしているのか?
- 目標:プロジェクトによりもたらされるべきメリットを、出来る限り定量的に表わす。
- 納期:プロジェクトの完成目標日時。
- 対象範囲:プロジェクトにより影響を及ぼす範囲(組織や製品など)。
- 成果物:プロジェクトにより形として出来上がるもの(製品・組織・設備・工場など)。
- 成功要件:各タスクやプロジェクトが、成功したかどうかを判断するもの(評価基準)。
- リスク:プロジェクト活動の成否を左右する要因(リソース不足など)、列挙しておく。
更に、CCPMのスケジューリングで書きました「サバ取り」「シングルタスクでの作業」「リソースのマップ活用」は、プロジェクトのムダを取り、最短な計画作りに重要な要素ですから、チェックが必要になります。
2.実行段階
実行段階に入ったプロジェクト業務は、途中で問題が発生しても、それを上司に報告すると「叱られる」「自分達で何とかなるだろう」「まだ日数があるから大丈夫だ」などと考え、なかなか報告しないのが実体ではないでしょうか?
しかし、プロジェクト管理者が正しいマネージメントを行うには、正しい情報をタイムリーに入手することが大切です。そのためには、
①プロジェクト期間に適応した「定期報告」
プロジェクトの進捗報告サイクルは、プロジェクトの重要度・危険度、プロジェクトやタスクの期間などにより決める必要があります。もちろん突発的に発生した大きな問題は、発生時点で報告すべきです。
しかし、徐々に遅れてきているような情報などについては、「コミュニケーションを阻む5つの心」が、情報伝達のスピードを遅らせてしまいます。
《 コミュニケーションを阻む5つの心 》
- 依頼心 : 誰かが伝えてくれるだろう
- 横着心 : ある程度まとまってから伝えれば良いだろう
- 老婆心 : 下(または上)は、この程度は知らなくて良いだろう
- かばい根性 : 悪い情報を上に伝えると、関係者が気の毒だ
- 優越感 : 自分だけが知っている
そのためCCPMでは、このような心の迷いによるトラブルが起きないよう、進捗中のタスク全てについて決まったフォームで、定期的に進捗報告会を行います。(決まったフォームで行うのは、会議時間短縮にも役立ちます)
②正しい行動の確認
プロジェクト活動に内在する問題として、「学生症候群、マルチタスク、早期完了の未報告」が起きていないか?を、チェックすることは、プロジェクト管理者の重要な仕事です。
しかし、これらの状態になっていることを判断することは、非常に難しいと思います。なぜならば、これらの状態になっていることを知っている人は、作業者だけだからです。
そして、作業者は自分の評価が下がるため、自分の仕事の問題(遅れ)を、出来るだけ知られたくないと思うのは当然のことだからです。
これらの問題へ対処する方法としては、評価基準を変える(スループット評価)ということになりますが、評価基準を変えるということは、そう簡単にはいかないようです。
しかし、プロジェクト管理者が一日一回現場を回ることで、担当者と話したり、作業中の状況を見るなどすることで、異常を察知することは、ある程度できるようです。
3.チェック段階(進捗報告会)
CCPMにおける定期的な進捗報告会は、問題の起きているプロジェクトに対し、「どのようなアクションを取るべきか」を決める重要な場所です。
そして、プロジェクト管理者のマネージメント力が、一番問われる場面でもあります。
ここでは、危険ゾーンに入ってしまったプロジェクトに、対策実施の指示を出すことが求められます。
しかし注意ゾーンで考えられた対策内容は、多くの場合「実施したいが実施できない」状況にあることが、ほとんどではないでしょうか?
例えば、注意ゾーンで検討された対策の多くは、「リソースの追加投入」「残業・休日出勤」などであり、
実施には、予算のオーバーや、他のプロジェクトからのリソースの流用といった、リスクを伴うことが多いからです。
特に、スタートしたプロジェクトは全てが「最優先プロジェクト(プロジェクト依頼元が違うため)」であり、他のプロジェクトへリソースを流用させることを拒みます。
そのためプロジェクト管理者は、実行中のプロジェクト全てに対し、優先順序を明確にしておく必要があります。
また、リソースマップを現在の部署だけに留めず、他の部署に移動した作業者も含め作成しておくことで、リソース数を一時的に増やし対応することも可能になります。
(全体最適の考え方から考えれば、社内のリソースの流用は、内部のお金の移動だけです)
ただし、これらの対策は、管理者同士の調整作業が必要になりますので、プロジェクト管理者としての非常に重要な任務になります。
4.アクション段階
危険ゾーンのプロジェクトは、納期遅れの危機から救うための対策であるため、当然進んでいると考えられがちですが、実はなかなか進まないというのが実体のようです。
なぜならば、他のプロジェクトからの応援や、他の部署からの応援をもらうのは面倒だし、頑張れば「なんとかなる」と勝手に判断して、対策を後伸ばしにしていることが多いからです。
また、現場は日頃から「コスト削減」をしろと言われているため、納期よりコストを守る行動を取ろうとするのも事実です。
更に、外部のリソース(外注先)を使うことは、予算をオーバーすることにつながり、最終的に自分の評価が下がると考え、なかなか外注を使わないということも多いようです。
そのためプロジェクト管理者は、遅れているプロジェクトだけを特別管理対象として、進捗報告サイクルを細かくし、対策実施の効果を確認する必要があります。
また、効果があまり現れない場合は、他の対策を実施するよう指示します。
最後に、プロジェクトは必ず上手く行くわけではありません。そのため、プロジェクト管理者は、「勇気のあるプロジェクトの中断や中止」を決断しなければなりません。
この決断は、TOCの全体最適の考え方からも、重要なポイントです。
プロジェクト管理者のマネージメントについては、ここまでです。
次回はCCPMのまとめとして、考え方の整理と補足説明をします。