今回は、メールフォームで頂いた皆さんの投稿の中から、思考プロセスの「現状問題構造ツリー」作成時に陥りやすい問題について、アドバイスしたいと思います。

思考プロセス「現状問題構造ツリー」作成のポイント

思考プロセスの5つのツリーの中で、良く使われるのが「現状問題構造ツリー」と「対立解消図」です。

その中でも現状問題構造ツリーは、企業や皆さんが抱えている問題を「原因と結果」の関係で構造化するということで、問題意識さえあれば気軽に作り始めることができます。

しかし、いざ始めてみると問題同士の前後関係や結び付けは意外に難しく、苦労して作成したツリーの構造に納得できず途中で止めてしまったり、他の人には受入れてもらえなかったりして、思考プロセスによる取組みをあきらめてしまう方も多いのではないでしょうか?

そこで、ここでは現状問題構造ツリー作成時に陥りやすい問題や、納得のいくものにするためのポイントなどを紹介したいと思います。

現状問題構造ツリー作成時に陥りやすい問題

なぜ自分や仲間で作成した問題の構図なのに「しっくり」こないのか?なぜ他の人はこの問題構造を理解してくれないのか?悩んでいませんか!

その原因を考えてみましょう。

まず最初に考えられることは、「UDEの書き方が悪い」ということです。

もともとUDEは、目的達成を阻害する好ましくない事実を書くのですが、立場の違いや思い入れの違い・業務の違いなどから、その表現の仕方はまちまちです。

では、UDEの書き方が悪いとは、どのようなものなのか列挙してみます。

<UDEの書き方が悪い>
  1. UDEに書かれている内容が長い
  2. UDEに書かれた文章の意味が曖昧である
  3. UDEに複数の問題が書かれている
  4. UDEに書かれている内容が事実であるか判らない
  5. UDEに書かれている内容の悪さ加減が判らない
  6. 目的とは直接関係の無い事柄をUDEに書いている
  7. UEDに単語だけが入っている

それぞれについて、例を挙げて解説します。

1.UDEに書かれている内容が長い

【原因】 説明文が含まれている

  • 顧客の要求量に合わせ生産量を決めているため、段取りの停止ロスが30%以上と多い。
  • 生産性を下げないために、直ぐに必要でないものまで生産している。
  • 世の中の景気が上がっているにもかかわらず、受注量が増えない。

【対策】 このようなUDEは、文章を分割して別のUDEにすると良いでしょう。

2.UDEに書かれた文章の意味が曖昧である

【原因】 内容が抽象的すぎる

  • 会社は改善に力を入れていない。
  • 前工程ばかりがいつも楽をしている。
  • 仕事にやる気が無い人が多い。

【対策】 このようなUDEは、どうしてそのように思ったのか?を書いてみると良いでしょう。

3.UDEに複数の問題が書かれている

【原因】 2つ以上のUDEが入っている

  • 毎日夜遅くまでいるのに、残業手当が付かない。
  • 運搬が多く、効率が悪い。
  • 設備が老朽化しており、生産性が悪い。

【対策】 このようなUDEは、二つのUDEに分けると良いでしょう。

4.UDEに書かれている内容が事実であるか判らない

【原因】 思い込みで書いている

  • 上司は定年まで波風を立てたくないと思っている。
  • 社長はこの事業に興味が無い。
  • 世の中の景気が悪いから、自社の受注も減っている。

【対策】 このようなUDEは、見たり聞いたり調べたりして事実を掴んで書き換えましょう。

5.UDEに書かれている内容の悪さ加減が判らない

【原因】 イメージ的な表現になっている

  • 歩留りが低い。 不良が多発している。
  • 稼働率が低い。 段取り時間が長い。
  • 利益率が低い。 手待ちが多い。

【対策】 このようなUDEは、いつと比べて(何と比べて)どれ位悪いのか?を数値で書きましょう。

6.目的とは直接関係の無い事柄をUDEに書いている

【原因】 自分の関心事を書いている

  • 自由に仕事のできる環境が無い。
  • 時間に追われる研究開発では、ろくなものができない。
  • 自社は女性が少ない。

【対策】 このようなUDEは、目的をもう一度読み直し、目的達成を妨げているものか確認してください。

7.UEDに単語(主語)だけが入っている

【原因】 単語(主語)を見れば、誰もが問題を理解できると思っている

  • 段取り、 歩留り
  • 生産性、 やる気
  • 生産量、 環境

【対策】 このようなUDEは、主語に述語を付けるようにしましょう

ここではUDEの悪い書き方として7つの例を挙げましたが、その他にも「社内用語を使う」「稼働率などの計算に使われる数値のとらえかたが違う」「変えようの無い問題である」などがあります。

次に考えられることは、原因と結果の関係が不完全であるということです。

現状問題構造ツリーは、因果関係ロジックで作られます。

そのため結果を引き起こす原因となるものを、全て洗い出す(十分な状態を作り上げる)必要があります。しかし、思い込みやめんどくささなどにより、適当なところで止めてしまうことも多いようです。

そうなると、結果を引き起こすための原因に抜けが発生したり、原因と結果の間が飛んでいる(間のロジックが抜けている)などにより、原因と結果の関係が不完全なものになってしまいます。

では、原因と結果の関係が不完全とは、どのようなものなのか列挙してみます。

<原因と結果の関係が不完全>
  1. 結果を起こすための原因に抜けがある
  2. 中核問題を最初から決め付けている
  3. 解決方向をイメージして、問題の構造化をしている
  4. 原因と結果の関係を双方向矢印で書いている
  5. ANDとOR条件が間違っている
  6. 変えようの無い事実が根本原因になっている

それぞれについて、例を挙げて解説します。

1.結果を起こすための原因に抜けがある

【原因】 今挙げられている原因だけでは、結果は起きない


【対策】 今出ている原因だけで、結果が起きるか?検証する。(他の人を加え)

2.中核問題を最初から決め付けている

【原因】 自分はこれが中核問題だと決めつけ、中核になるような問題だけを書いている


【対策】 他の人を加え、もう一度最初からUDEを洗い出してみる

3.解決方向をイメージして、問題の構造化をしている

【原因】 問題を都合よく捻じ曲げている

【対策】 他の人も加え、何回も読み直してみる(他部署の人が納得できるか確認する)

4.原因と結果の関係を双方向矢印で書いている

【原因】 ネガティブループという考え方を知らない

【対策】 ネガティブループを意識的に発見しましょう。(対策すると大きな成果につながります)

5.ANDとOR条件が間違っている

【原因】 AND記号が無い。又は全てに付けている

【対策】 本当にこれで結果は生まれるのか?じっくりチェックして見ましょう。

6.変えようの無い事実が根本原因になっている

【原因】 自分達が変えられないことに注目している(他人事で考えている)

【対策】 ツリーを作る最初の段階で、対象とする範囲を明確にしておく。

ここまで現状問題構造ツリーが「しっくりこない(納得できない)」時の、主な原因を「UDEの書き方が悪い」「原因と結果の関係が不完全」と分けて、それぞれ例を挙げて書きました。

現状問題構造ツリーを作成する場合には、この例をチェックシート代わりに使ってみてはいかがですか。

ツリーを納得のいくものにするためのポイント

  1. 目的を明確に示しておく。(現状問題構造ツリー作成の用紙の左端上部に、書いておく)
  2. UDEを挙げる前に、対照とする範囲(会社全体・部署・工程など)を明確にしておく。
  3. UDEを挙げ終わったら直ぐにツリーの作成に入らず、UDEの検証を行う。(好ましくない事実か?)
  4. 現状問題構造ツリー作成時は、UDEに対しあまり深く掘り下げない。(なぜなぜ問答をしない)
  5. 原因と結果がつながったら、必ず「もし(原因)だったら、その時は(結果)である」と読んでみる。
  6. 納得できない場合は、仮定を考えてみる。(もし(原因)だったら、その時は(結果)である。なぜならば(仮定)であるから。」というように、原因と結果の関係を繋ぐ根拠を付加する)
  7. 広い範囲の問題を構造化する場合は、関連部署の人達を参加させるか、途中でのチェックに入ってもらう。(思い込みを出来る限り廃除する)
  8. QC手法の特性要因図や連関図などと同じと考えない。(なぜなぜで細かな原因を追究しない)
  9. 部門別や工程別で分けて、ツリーを作らない。(部門で違う場合は、「何々工程はこうだ」と書く)
  10. カードに書かれるUDEや仮定などは、誰が読んでもわかるように「簡易明白」に書く。

まとめ

今回は、メールフォームから頂いた投稿で質問の多かった、思考プロセス「現状問題構造ツリー」作成上の問題点(しっくりこない原因)について書きました。

今後も、皆様からの投稿などで質問の多いものについては、適時解説してゆきたいと思います。