前回までは、CCPMによるスケジューリング方法と、特徴を書きました。
今回は、CCPMによるプロジェクトのマネージメント方法として、プロジェクトの進捗管理について書きます。
プロジェクトの進捗管理方法
CCPMによる進捗管理には、従来の管理方法とは違った、いくつかの特徴があります。
1.CCPMにおける進捗管理の特徴
- 個々のタスクを管理するのではなく、プロジェクト全体を管理する。
- 進捗状況の報告は、進度を%で報告するのではなく、残日数で報告する。
- 遅れへのアクションは、タスク単体の遅れでは行わず、プロジェクト全体の遅れで行う。
- クリティカルパスを管理するのではなく、クリティカルチェーンを管理する。
1)プロジェクトバッファによる進捗管理
従来より進捗管理というと、各タスクが遅れないように詳細な管理を行ってきました。そのためタスク担当者は、自分のタスクが遅れないように、予定したリソースを確保していました。
しかしこの行為により、他のプロジェクトやタスクが遅れていても、自分のタスクの遅れを危惧し、必要なリソースを遅れたところに投入することを拒み、結局、会社全体としての利益を圧迫していました。
CCPMでは、このようなことが起きないように「各タスクの遅れには対処せず、プロジェクト全体としての遅れに対処」するようにしています。
方法としては、プロジェクト全体(クリティカルチェーン)の遅れを、プロジェクトバッファにより吸収することで対応します。
また、進捗状況に対するマネジメントは、プロジェクトの進捗状況とプロジェクトバッファの消費量をモニタリングすることで管理します。
それでは、例を使って説明してみます。
《 例 》
CCPMのスケジューリング方法に基づいて、プロジェクトの計画を立てた結果、
プロジェクト期間(クリティカルチェーン) : 40日
プロジェクトバッファ : 20日
納期 : 今日から作業を開始して、ちょうど60日後
①プロジェクト開始前
<プロジェクトネットワーク>
適度な間隔(プロジェクトの期間や重要度で決める)で、定期的に各タスクの残日数を確認する。
<バッファ管理グラフ>
バッファ管理は、プロジェクトの残日数比率とプロジェクトバッファの残日数比率により、3つのゾーンに分けることでアクションを決めます。
危険ゾーン : 直ぐに対策をしなければ、納期遅れが発生する状態。
(アクション → 直ぐに遅れを取り戻す対策を実施する。)
注意ゾーン : 注意していなければ、直ぐに危険ゾーンに入ってしまう状態。
(アクション → 危険ゾーンに入ってしまった場合に、実施する対策を決める)
安全ゾーン : 予定通りプロジェクトが進んでいる状態。
(アクション → 何もしない)
②プロジェクト開始日から、15日経過した状態
・各タスク担当者からの報告
タスク1の進捗状況:予定期間15日に対し、終わるまでにあと4日間かかる。(4日間の遅れ)
タスク4の進捗状況:予定期間10日に対し、終わるまでにあと5日間かかる。(予定通り)
他のタスクの進捗状況:まだ未着手
進捗確認の結果、クリティカルチェーン上にあるタスク1が、4日間遅れていることが解かりました。
<プロジェクトネットワーク>
ネットワーク図は、タスク1につながる全てのタスクを4日間後ろへずらします。4日間の遅れは、プロジェクトバッファを4日間減らすことで対応させ、納期は守られます。
<バッファ管理グラフ>
バッファ管理グラフには、
プロジェクト全体の進捗状況:タスク1が4日間遅れているので、進捗状況11日間とみます。
(プロジェクト進捗率 = 11日 ÷ 40日 = 27.5%)プロジェクトバッファの消費状況:タスク1の4日間の遅れにより、4日間消費された。
(プロジェクトバッファの消費率 = 4日間 ÷ 20日間 = 20%)
現在のバッファグラフでは、プロジェクトは安全ゾーンにいるため、アクションはいらない。
③プロジェクト開始日から、25日経過した状態
・各タスク担当者からの報告
タスク1の進捗状況:予定期間15日間に対し、19日間で終了。(4日間の遅れ)
タスク4の進捗状況:予定期間10日間に対し、10日間で終了。(予定通り)
タスク2の進捗状況:予定期間9日間に対し、終わるまであと5日間かかる。(2日間の遅れ)
タスク3の進捗状況:予定期間12日間に対し、終わるまであと6日間かかる。(6日間の遅れ)
他のタスクの進捗状況:まだ未着手
進捗確認の結果、クリティカルチェーン上にあるタスク1の4日間の遅れと、タスク3の6日間の遅れにより、予定期間に対し10日間の遅れが発生していることが解かりました。
<プロジェクトネットワーク>
ネットワーク図は、タスク3につながる全てのタスクを10日間後ろへずらします。10日間の遅れは、プロジェクトバッファを10日間減らすことで対応させ、納期は守られます。
<バッファ管理グラフ>
バッファ管理グラフには、
・プロジェクト全体の進捗状況:タスク1が4日間・タスク3が6日間の遅れで、進捗状況15日間とみます。(プロジェクト進捗率 = 15日 ÷ 40日 = 37.5%)
・プロジェクトバッファの消費状況:タスク1の4日間・タスク3の6日間の遅れにより、10日間消費された。(プロジェクトバッファの消費率 = 10日間 ÷ 20日間 = 50%)
現在のバッファグラフでは、プロジェクトは注意ゾーンにいるため、危険ゾーンに入った時の対応策(アクション)を検討・決定しておきます。
④プロジェクト開始日から、42日経過した状態
・各タスク担当者からの報告
タスク1の進捗状況:予定期間15日間に対し、19日間で終了。(4日間の遅れ)
タスク4の進捗状況:予定期間10日間に対し、10日間で終了。(予定通り)
タスク2の進捗状況:予定期間9日間に対し、11日間で終了。(2日間の遅れ)
タスク3の進捗状況:予定期間12日間に対し、終わるまで既に11日間遅れていて、更にあと1日間かかる。(12日間の遅れ)
他のタスクの進捗状況:まだ未着手
進捗確認の結果、クリティカルチェーン上にあるタスク1の4日間の遅れと、タスク3の12日間の遅れにより、予定期間に対し16日間の遅れが発生していることが解かりました。
<プロジェクトネットワーク>
ネットワーク図は、タスク3につながる全てのタスクを16日間後ろへずらします。16日間の遅れは、プロジェクトバッファを16日間減らすことで対応させ、納期は守られます。
<バッファ管理グラフ>
バッファ管理グラフには、
・プロジェクト全体の進捗状況:タスク1が4日間・タスク3が12日間の遅れで、進捗状況26日間とみます。(プロジェクト進捗率 = 26日 ÷ 40日 = 65%)
・プロジェクトバッファの消費状況:タスク1の4日間・タスク3の12日間の遅れにより、16日間消費された。(プロジェクトバッファの消費率 = 16日間 ÷ 20日間 = 80%)
現在のバッファグラフでは、プロジェクトは危険ゾーンにいるため、注意ゾーンで取り決めた対応策(アクション)を直ぐに実施します。
⑤プロジェクト開始日から、50日経過した状態
・各タスク担当者からの報告
タスク1の進捗状況:予定期間15日間に対し、19日間で終了。(4日間の遅れ)
タスク4の進捗状況:予定期間10日間に対し、10日間で終了。(予定通り)
タスク2の進捗状況:予定期間9日間に対し、11日間で終了。(2日間の遅れ)
タスク3の進捗状況:予定期間12日間に対し、24日間で終了。(12日間の遅れ)
タスク5の進捗状況:予定期間13日間に対し、終わるまであと6日間かかる。(予定通り)
進捗確認の結果、クリティカルチェーン上にあるタスク1の4日間の遅れと、タスク3の12日間の遅れと、タスク3の12日間の遅れ以降、対応策を講じたことにより、その後は遅れが発生していないことが解かりました。
<プロジェクトネットワーク>
ネットワーク図は、プロジェクトの進捗を進めるだけで、納期は守られます。
<バッファ管理グラフ>
バッファ管理グラフには、
プロジェクト全体の進捗状況:タスク1が4日間・タスク3が12日間の遅れで、進捗状況34日間とみます。(プロジェクト進捗率 = 34日 ÷ 40日 = 85%)
プロジェクトバッファの消費状況:タスク1の4日間・タスク3の12日間の遅れにより、16日間消費された。(プロジェクトバッファの消費率 = 16日間 ÷ 20日間 = 80%)
現在のバッファグラフでは、プロジェクトは注意ゾーンにいるため、危険ゾーンに入った時の対応策(アクション)を検討・決定しておきます。
CCPMのマネジメントでは、以上のような進捗管理方法により、遅れに対するアクションを決めます。
なお、危険ゾーン・注意ゾーン・安全ゾーンの開始時と、終了時のゾーンの傾きは、プロジェクトの難易度やプロジェクトバッファの量、リソースの安全性などで決めます。
基本的には、プロジェクト開始当初での遅れは、残タスク(残日数)が多いため早めに対処するように、プロジェクトバッファの消費率が少なくても危険ゾーンに入るようにし、残タスク(残日数)が少なくなれば、危険度が減るため消費量が多くても、直ぐには入らないようにします。
次回は、プロジェクト管理者が行うべき「マネージメント」について書きます。