今回は、CCPMによるプロジェクト活動の「スケジューリング方法」について書きます。
CCPMのスケジューリング(ネットワークの作成)
CCPMのスケジューリングは、計画担当者(プロジェクトマネジャー)が一人で作るのではなく、対象となるプロジェクトに関連する担当者が、一同に集まり行われます。
プロジェクト関係者を一同に集める目的は、
①プロジェクトの目的・目標や成果物を、全員が同一レベルで把握できる。
②計画時間内に、必要以上の時間的余裕(サバ)が入らないようにできる。
③タスク(作業)の抜けをチェックすると共に、改善意見を取り入れられる。
④プロジェクト進捗上のリスクのピックアップと、対応策の検討ができる。
⑤重要リソースや重要資源の事前確認ができる。
などです。
プロジェクトは、基本的に初めて取組む活動ですから、計画担当者が慣れているとはいえ、「今まで実施したことの無い仕事」の内容や時間を、見積もることは難しいはずです。
ですから、プロジェクトのスケジューリングを行う場合は、計画担当者がたたき台を作り、その後、関係者が一同に集まり「全員が納得できる計画」を行う必要があります。
3.CCPMによるスケジューリング方法
CCPMによるスケジューリングは、TOCの基本概念である「全体最適」の考え方と、プロジェクト業務の中心が「人」であること、初めて取組む活動であり「不確実性」が非常に高い点などを、意識して作られています。
《 CCPMのスケジューリング手順 》
ここでは、CCPMによるスケジューリングの手順と、その理由について書きます。
1)プロジェクトを定義する。
これから実施されるプロジェクトは、「どのようなものか?」を明確にします。
<定義すべき内容>
- 目的:このプロジェクトにより、何を達成しようとしているのか?
- 目標:プロジェクトによりもたらされるべきメリットを、出来る限り定量的に表わす。
- 納期:プロジェクトの完成目標日時。
- 対象範囲:プロジェクトにより影響を及ぼす範囲(組織や製品など)。
- 成果物:プロジェクトにより形として出来上がるもの(製品・組織・設備・工場など)。
- 成功要件:各タスクやプロジェクトが、成功したかどうかを判断するもの(評価基準)。
- リスク:プロジェクト活動の成否を左右する要因(リソース不足など)、列挙しておく。
この定義により、業務内容のあいまい性を排除し、プロジェクトメンバー全員が「何を、どこまで」実施するのか?を、明確に把握することが出来ます。
2)プロジェクト・ネットワーク(計画)を作成する。
プロジェクトのスケジューリングは、プロジェクト・ネットワークと呼ばれるタスクのつながりを、作成することから始まります。
そしてCCPMでは、このネットワーク作りを「従来とは逆」の流れで作って行きます。
CCPMが現時点(開始時点)から、完成に向けてネットワークを作成せず、完成から現時点に向けて作成する理由は、
①目的としているプロジェクトに必要なタスクだけを、正しい順序で抽出する。
②プロジェクト達成に向けての、最短ネットワークを作成する。
という、2点からです。
まずは、プロジェクトの完成直前の状態は、「どんな状態になっているか?」を考えます。
<プロジェクトの定義を貼る>
このとき、1)の「プロジェクトの定義」を紙に書き、完成時点の場所に張り出します。これにより完成直前の状態をイメージをしやすくします。
<直前のタスクを貼る>
そして、プロジェクト完成の直前では、どのようなタスクが実行されているのか?を考えます。
<タスクの名称を記入する>
まず、カードに「タスクの名称」を記入します。
更に、このタスクの開始条件及び、完了条件を記入しておくと良いでしょう。(タスクカードに書くのが大変であれば、タスク条件一覧表を作るのも良いでしょう)
<タスクの必要期間を記入する>
次に、このタスク実行にかかる期間を、担当者に聞くか、今までの経験から導き出し、タスクのカードに日数を記入します。(この時点で、現在から納期までの期間を意識してしまうと、最初から出来ない期間や余裕の入り過ぎた期間が入ってしまいますので、意識せずに入れてもらいましょう。)
<タスク実行に必要なリソースを記入する>
同時に、その期間はどのリソース(どのレベルの人・どんな設備など)をイメージして設定したのか?も記入します。
ここで記入されるべきリソースは、個人名や固有設備の名称ではなく「同一スキルや同一機能」を持った集まり=「リソース群」の名前を記入します。
この場合、リソースマップと呼ばれる表を作成しておくと便利です。
特に商品開発や設計・ソフト開発などのネットワークを作成する場合は、スキルの問題からその人しか出来ない業務が多く、個人名を入れて「個人を確保したい」と考えます。
しかし、個人を確保するということは、このプロジェクト自体が一個人により左右されてしまうということになり、プロジェクトが危険(納期の遅れや品質の低下など)にさらされる可能性が大きくなります。
また、高いスキルを有する人は、比較的に他のプロジェクトにも参加していることが多く、どちらか、または両方のプロジェクトを危険にさらすことが多くなります。
このようにして一つ一つのタスクをつなげ、プロジェクトの完成時点から開始までのネットワークを作り上げます。ただし、このままではプロジェクトの期間が非常に長くなり、納期を守れない状況になってしまうことが多いはずです。
そのため次に、タスクに含まれている「サバを取り」を行います。
3)タスクの時間的な余裕(サバ)を取る。
前にも述べましたように、プロジェクトは今まで行ったことの無いことを実施するため、見積り時間を正確に設定することはできませんし、失敗する可能性もあります。
そのため人間は、どうしても自己防衛本能により、タスク(作業)の時間見積りに、「時間的な余裕(サバ)」を入れます。
上図は、タスクの時間見積りを行う時のイメージです。
<質問>
あなたがもし、プロジェクト担当者として「はじめて取組む仕事」の、時間見積りを聞かれた場合、
①出来るか?出来ないか?50%の確率の期間 (10日)
②出来る確立が80%の期間 (20日)
③99%出来る期間 (45日)
この中の、どの期間を答えますか?
<答え>
①の「出来るか?出来ないか?50%の確率の期間」と答えた方は、すばらしい方です。
いつも一生懸命に取組み、「失敗したのは自分の力が足らなかった」と考える方でしょう。しかし、誰しもが出来ることではありません。
そのため、ほとんどの人は、
②の「出来る確立が80%の期間」か、③の「99%出来る期間」と、答えるのではないでしょうか。
なぜならば、過去にやったことのないことは、誰でもが自信がありません。そして遅れた場合には、「怒られる、責任を追及される」のは自分であるため、出来る限り遅れない時間を答えます。
このように、プロジェクトに含まれるタスクには、多くの時間的余裕(サバ)が入っています。
そこでCCPMでは、この時間的余裕と実作業時間を区分けします。(ここでは「サバ取り」といっても、サバを取るのではありません)
とは言え、「では、どれだけのサバが入っていますか?」と聞いても、担当者のほとんどは「サバなんて、入っていないよ!」と、答えるでしょう。
そこでサバ取り中には、以下のような言葉をかけてみてください。
- 出来るか?出来ないか?50%の確率でよいとしたら、どれ位の期間が必要ですか?
- 半分は遅れても良いですよ!(怒ったり、責任を追及したりしません)
- 遅れてもプロジェクトの最後に、大きな時間的余裕を取りますから大丈夫です!
- この仕事だけに集中できたら、時間はどうなりますか?
このような質問をし、最初の見積りから実作業とサバを分離します。(修正する前の作業時間は消さずに、修正後の作業時間は、その横に書きましょう)
そして、参加者全員または、その業務の専門家に「タスク内容」と「修正前の作業時間」、「修正後の作業時間」を見てもらい、50%の見積り時間として妥当かどうか?をチェックしてもらいます。
この作業を、全てのタスクに行います。
また、ネットワーク作成時に、サバ取りを同時に行わない理由は、同時に行うと議論する内容があちこちに飛び収拾が付かなくなり、時間ばかりがかかってしまうからです。
次に、リスク対策、リソースの競合排除、バッファの挿入などを行います。
これらについては、「なぜ、ここまでしてサバ取りをするのか?」の理由説明と一緒に、次回、CCPMのスケジューリング方法の続きとして、スケジューリングの特徴で書きます。